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造――つまり提督にとって都合のいい部屋にしてしまえば、本当に出てこなくなるからだ。もっとも、何があろうとなかろうと、提督はこの部屋から出ないのだが、艦娘達はそれを知らないのだから仕方ない事である。
ただ、何を作るか、と聞いておきながら、明石はある程度提督からの答えを予想していた。そしてそれは恐らく裏切られないだろう、とも。
事実、
「んー……特にはないかなー」
その通りであった。明石はその程度には提督を理解していた。大淀の様な理知的な美人が、何かして欲しい事はないか、と聞いた際に、カップラーメンと答えるような人間だ。理解しやすいとしか言いようがない。
弁当箱を片付け終え、魔法瓶の蓋を確りと閉めた事を確認していた明石は、しかし動きを止めた。提督が明石に声をかけたからだ。
「あぁいや、欲しい物があるんだけど……でも前も無いって……んー……」
「? なんです? ある程度なら用意できますよ? まぁ大それたのは無理ですけれど」
そして提督は口を開き――
明石は提督の言葉に首を横に振ってしまった。
――なんというか、申し訳ない気持ちで一杯だけど、そんなの知らないものー。
断られた際に浮かべた提督の自嘲する相が、明石の脳裏から離れてくれない。
意識せず、自然と早くなっていた足を緩め、明石は長い廊下の窓へ目を移した。明石の酒保と工廠はここからでは見えない。
――あぁ、そう言えばあれ……少し前にも初霜が同じ物ないかって聞きにきたなぁ……。
提督が着任してから少し後の頃だ。耳にして大規模工事を実施するのかと思ったが、どうやら違うらしいとその時の彼女は理解した。理解はしたが、何故それを自分に聞いてきたのかは、理解できなかった。そして、それは今も同じだ。
――提督って、ちょっと独特よねぇ。メンテ必要かなぁ?
胸中で呟いて、長い廊下を歩いていく。角を曲がって階段を下りていく最中に、窓から見える港をその瞳に映して、明石は苦笑を浮かべた。
――母港拡張なんて、工作艦でもちょっと無理かな。
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