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食堂からの帰り道、姉妹や仲間達から離れ一人、てくてく、といった調子でその少女が歩いていると、開けた庭のベンチにぼんやりとした様子で座っている少女を見つけた。
少々歩調を変え、少女はベンチに座る黒髪の少女へ近づいていき――
「お帰りなさい、初霜」
自身の被っていた帽子を初霜の頭に乗せ、暁は微笑んだ。
「今日はどのメンバーで海に出たの?」
「今日は、山城さん、龍驤さん、鳳翔さん、羽黒さん、球磨さん、私、ですね」
「ふーん、いいメンバーじゃない」
「はい、結果を出せたと思います」
そう言って控えめな笑みを見せる初霜に、暁はつられて幼い笑みを零し、すぐそれを打ち消した。自身の相を覆う笑顔に、納得いかないと勢い良く首を横に振ったのだ。
――淑女! 暁は淑女だもの!
むふん、と鼻から息を吐き暁は握りこぶしを作って空を見上げる。一人前のレディを自認する暁である。笑みと言う物はもっと余裕を見せる相であるべきで、子供のような笑みは暁にとってレディらしからぬ物であるのだ。
暁は見上げた空にぼんやりと薄く映る、熊野、イタリア、瑞穂、愛宕等の姿に力をこめて頷き、握っていた拳に更に力をこめた。あと、どうでもいい話だが暁の目に映る姿の中にグワットの姿はなかった。グワットの姿はなかった。
初霜は隣の暁を真似てか、同じように空を見上げて首をかしげている。彼女の目には当然ただの青い空と白い雲とまばゆい太陽があるだけの、常の空であった。
暁は余裕をもった相を装って咳をはらう。その姿が既に余裕のなさを見せてしまっているのだが、艦娘としてはともかく、少女として幼い暁にはまだまだ理解し得ない事である。
帽子を頭に乗せたまま、首をかしげてじっと暁の顔を見る初霜に、暁は口を動かした。
「初霜が秘書艦として頑張って、作戦でもっと頑張ってくれれば、同じ第一水雷戦隊の仲間として暁ももっと頑張れるわ!」
暁なりの声援であり、感謝だ。初霜と暁は所属する駆逐隊は違うが、上は同じだ。第一水雷戦隊旗艦阿武隈の下、地味で目立たぬ、だからこそ意味のある仕事を重ねてきた仲間である。その仲間が提督の秘書艦として、また第一艦隊の準レギュラーメンバーである事に暁は妬まず、そんな初霜が居るから自身も進めると言ったのである。
その言葉に初霜は、にこり、と微笑み頭に乗せられていた帽子を深々と被った。
「暁さんにそう言って貰えるなら、私ももっと頑張らないといけませんね」
「それでこそ初期秘書艦なんだから」
暁は胸を張って応える。何故に胸を張ったかはレディにしか分からない。グワット辺りなら分かるかも知れないが、彼女は現在プリンツに魚の骨をとって貰っている最中なのでここには居ない。そしてその隣
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