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が自身を「姉」と言ったのも、決して間違いではないのだ。
初春型、という駆逐艦は軍上層部の無茶な要求によって作られた。従来の駆逐艦より小型に、従来の駆逐艦同様の武装に、と建造された初霜の姉である初春と子日は、その無理な設計が祟って問題を抱える艦となってしまったのだ。そうなると、設計を見直さなければならない。そのため、若葉と初霜の建造には特V型――暁型の設計思想が一部流用された訳である。
もちろん、それは彼女達の"前"の頃の話だ。少女の体を持った今はまた違った可能性もあったのだが……結果は、今並んで座る二人を見れば言うまでもない事だろう。
「秘書艦……かぁ」
コーヒージュース、とでも言うべき甘い缶コーヒーから口を離し、暁は流れる雲を遠い目で見つめて呟く。先ほどまでの話題であったその単語に、初霜は暁に返した。
「初めの五隻……五人からの伝統でしたよね」
「そうそう。初めて人と接して、人と艦の間をとりもった五人……」
艦娘として人類と接触したその五人が、今も多くの艦娘達と僅かな人間――提督の間をとりもっている。人との相性が特に高かった五人の同型同名艦娘は、今も各鎮守府や警備府に着任する提督の補佐役として、大本営から一番最初に与えられている艦娘――所謂初期秘書艦だ。
「秘書艦かー……」
妹一人、姉三人がその最初の五人である事に思う事があるのか、暁は缶コーヒーを両手で包み込み大きなため息をついた。少しばかり不安げに顔を窺おうとしていた初霜は、しかしそれを為せなかった。暁が突然隣にいる初霜に顔を向けたからだ。
「吹雪と電と叢雲はまだ分かるの! 漣や五月雨って大丈夫なの?」
別に重たい事は考えておらず、暁はそんな事を考えていたらしい。安堵のため息を小さく零す初霜を無視して、暁は更に口を動かす。
「だって漣なんて言ってる事よくわかんないし、五月雨はばーってやってごんってやって良くこけてるじゃない!」
初霜にはその擬音は判然と出来なかったが、暁の言いたい事は理解できた。漣は少々――大分……酷く癖の強い艦娘であるし、五月雨は何もない道でもこけるような艦娘だ。補佐役としてどうかと思わないでもない。と初霜は頷いたが、それだけではない事も理解している。
「艦娘も色々だから、提督も色々なんですよ」
吹雪を標準とするなら、叢雲は意志の弱い提督を引っ張るタイプで、電は我の強い提督を包み込むタイプだ。そして件の二人はというと、五月雨は庇護欲の強い提督と相性が良く、漣はオブラートに包んでマイルドにして明言を避けて人に優しく例えるなら、他者と接する事に少々問題がある自分の世界だけでも十分生きていける引きこもりがちなう○こ製造機一歩前インドア派の提督達から大人気の艦娘であった。
それ
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