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では魚の骨が喉にささって妹の名を叫ぶ利根が居たが、特に関係はない。
「それにしても……秘書艦、秘書艦……レディの響きよね!」
「そ、そうかしらか……?」
目をきらきらと輝かせて、暁は初霜の肩を勢い良く掴んだ。
「眼鏡とかスーツとか、こう紙一杯持って社長の横に居るんでしょ? 暁知ってるんだから!」
「……」
初霜は何も応えず、自身の姿を見下ろした。
胸の辺りを小さく叩き、スーツではない事を確かめる。鼻の辺りを、とんとん、と指で叩き、眼鏡がない事を確かめる。そして、彼女は暁に顔を向けた。
「そうした方がいいんでしょうか?」
「んー……」
暁はゆっくりと初霜の姿を眺めて、なにやら真剣に考え込み始めた。彼女の淑女理論が分析を始めてしまったのだろう。このままでは長考に入ると感じた初霜は、
「今度妙高さんや高雄さん、鳳翔さんに聞きましょうか」
そう言った。暁は思考の渦の入り口から脱し、目を閉じた。初霜が口にした艦娘達の顔を瞼の裏に描き、ふむふむ、といった様子で頷きながら目を開ける。
「なるほど、なかなかいい人選じゃない。じゃあ暁は熊野達に聞いておくわね。情報は多様じゃないと」
良い事言った、と隠す事もない相で満足げに頷く暁に、初霜は嬉しそうに頷き返す。どういった事であれ、自身の事を考えてもらえるというのは、幸せな事である。それゆえの、初霜の笑顔であった。
笑顔の初霜に気を良くしたのだろう。暁はベンチから立ち上がり、傍に置かれていた自販機へ、てくてく、と歩いていく。
「初霜、何飲む?」
「そ、そんな、悪いです」
慌ててベンチから腰を上げようとする初霜に、暁は人差し指を突きつけた。
「暁はお姉ちゃんなんだから、いいの!」
これを聞いた初霜は、おとなしくベンチに座りなおした。初霜にとって、その言葉は無視できないからだ。
暁は座りなおした初霜を見届けてから自販機に顔を向け、ポケットに入れてある愛用のデフォルメ化された猫の顔型の財布から小銭を取り出して投入口に入れた。ボタンを押して、また同じを事を繰り返す。違うのは押したボタンだけだ。
両手にそれぞれ缶を持ち、暁はベンチに戻ってくる。左手に在るオレンジジュースを初霜に渡すと、暁は右手にある缶コーヒーのプルトップをあけた。同じように、手に在る缶をあけた初霜が暁に小さく頭を下げる。
「頂きます」
「はい、どうぞ」
初霜はオレンジジュースを、暁はU○Cの缶コーヒーに口をつけ、小さく仰いだ。
その姿を第三者が見ていれば、仲の良い姉妹だと微笑んだだろう。ベンチで並び座る暁と初霜は、着ている服こそセーラー服にブレザーとそれぞれ違うが、顔立ちや体つきは驚くほど似ている。先ほど初霜に対して暁
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