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執務室の新人提督
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いる訳がない。
 
 そんな提督など放っておいて長良は執務室にあるメモを一枚取り、提督のペンを手にして、さらさらとペンを走らせ何かを書き込んでいく。
 
 ――無防備だなぁ。

 提督は、長良の肉付きのよい太ももを毒にならない程度に見てから、天井を見上げた。長良の姿は何故かブルマ姿だ。健康的な焼けた肌は、長良という健康美を前面に出した少女を輝かせる物だが、倒錯的な面がないとも言えない危うい物だ。
 
 視線を下げ、ため息をはいた提督の眼前に、突如白い物が広がる。それを何かとじっと凝視すると、何事かが書かれたメモだと分かった。もちろん、それを提督の眼前まで持って来たのは長良だ。
 
「司令官専用の健康的な体を作るための、メニューです!」
「えー……」

 長良からの手からメモを取り、上から目を通していく。

「えぇー……」

 どう見ても無理だった。オレ・メッチャ・ウラギリスキーとかルーニーやって瞬殺されたお荷物な人には到底無理なメニューだった。
 
「長良さん、無理だわこれ」
「私と神通さんだって出来るんだから、提督だって出来ます!」
「それもう大半が無理じゃないかな?」
「いけるいける!」
「なに、君達は誰かからセリフ取るのが――あぁいいや、でもこれ……本当に出来るのかねぇ? 例えばほら、球磨さんとか阿武隈さんとか、矢矧さんでも?」
「……」

 長良は目を閉じて暫し、むむむ、と呻ってから目を開けた。
 
「矢矧は……いける。阿武隈はアウト」
「アブゥ……」

 同じ長良型ではあるが、改長良型であり由良型とも呼ばれる彼女は駄目であったらしい。

「球磨は……球磨はどうかなー……意外に優秀な球磨だからなぁー……」

 猫、マイペース、あれ、眼帯のまとめ役である以上、優秀でなければならないのだろうが、長良でも球磨の優秀さが如何程の物であるかは分からない様だ。
 
「じゃあ、司令官。走ろう!」

 満面の笑みで、長良は提督の背を押してルームランナーへと向かっていく。押されるままの提督は、背後にいる長良を意識しながら、
 
 ――だから苦手なんだ。あんな笑顔を向けられたら、やれそうに思えるし、やらないとしょうがないじゃあないか。

 そう胸中で苦笑と共にもらした。
 
 二十分後、提督はギブアップした。
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