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響き始めている音が聞こえていたのだ。そして提督が眉を顰めると同時に、
「司令官! 走ろう!」
ルームランナーをかついだ長良が、転がり込んできた。
軽巡洋艦長良型一番艦長良。
提督がよく使う軽巡洋艦娘五人の中の一人である。
さて、その長良であるがどの様な存在であるかと問われれば、提督にとって実に明瞭な言葉で返せる。
「長良さんは元気だなー……」
「当然!」
これである。むしろその言葉以外となると提督から出る言葉は、苦手、しかなくなる。
――嫌いじゃないんだけれどなぁ。向かってる方向が逆なんだよねぇ、僕と彼女は。
かつて提督はそれを『平仄が合わない』と例えた。交友関係は同一の、又は類似の趣味趣向をもつ人間だけでは成り立たない。そんな事は提督も百も承知だ。しかも長良は、神通、阿武隈、矢矧、球磨と、提督が特に使いこんで第一艦隊に編成していた艦娘である。性能面においてなんら不満はなかった。なかった筈だが。
――"こう"なると、相性ってのがあるんだよねぇ、生身の。
しみじみと、何故かマイルームランナーを床に置き、提督のルームランナーをその隣に運ぶ長良を視界におさめたまま、提督は項垂れた。そのまま、提督は長良に声をかける。
「えーっと、今一応仕事中なんだけどもねー?」
「大丈夫! 長良に任せて!」
「なに、君達は誰かからセリフ取るのが仕事なの?」
提督に向かって、びしっ、と親指を立てる長良に提督はまた一段深く頭を沈めた。
「任せてっていうのは……その、何?」
「さっき廊下で加賀に会ったの」
そこで加賀は提督の仕事量が少ない事、運動量が足りているか不安な事、等々長良に語り、そして長良に少し見ておいて欲しいと言ったのだ。
「あと、なんか体力がなかったら夜にあれが来ても出来ないだろうって」
「ふむ?」
「あと初霜も今は第一艦隊で出てるから大丈夫――あ」
慌てて自身の口を両手でふさぐ長良を見て、提督は少しばかり黙り込み、あぁ、と手を打った。
史実にあった事を思い出したのだ。
「スラウェシ島のケンダリー攻略か」
「……あたりです」
嬉しくなさそうな顔で、今はもう空いた手で小さな拍手をする長良に提督は、疑問符の透けて見える相で続ける。
「いや、長良とぶつかって大破したのは、初春じゃあないか? 初霜は君のあとをついで旗艦になっただけじゃあ? それに……だいたい君に突っ込んで行ったのは初春の方だよ?」
「んー……でもやっぱり、お姉さんに怪我させたって言うが申し訳なくて……随分前に謝ってはいますけど、それで終わる話じゃないし……あとあと、そのあとの旗艦を引き継がせちゃったのも、これも申し訳
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