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執務室の新人提督
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ー」
「えぇ、大淀や長門と話し合って、かつ貴方の役に立てるようにと作戦に参加したんでしょうね」
「そんなに頑張っても、僕はなにも返せないんだけどなぁ……初霜さん」

 しみじみとした呟く提督を斜め後ろから窺いながら、加賀は少しばかり眉をひそめて口を開いた。
 
「貴方、駆逐艦の子に懸想しているの?」
「なんでそうなるんですかね?」

 顔を加賀に向けて頬を引きつらせる提督の目を、加賀はじっと覗き込みため息を吐く。
 
「仕事に戻りましょう、ロリコ――提督」
「今なんて言おうとしたのかな?」
「それは精神病の一つだとはっきり口にした方が?」
「まず僕はそれじゃないと理解して欲しい」

 はっきりと口にした提督に、加賀は頷いただけだ。それが了解の意であるのか、どうでもいいの意であるかは、提督には分からなかった。白黒はっきりしたいと提督は考えたが、今仕事中であるのも事実だと思いなおし、不承不承頷いて妖精達に渡す戦闘機用の資材記載書を机に広げた。この書類は最終的に秘書艦の手によって妖精に渡される。そこに記された資材数で、妖精達は開発、建造を始めるのだ。
 
「あー……彩雲、烈風、流星狙いは……」

 ――あぁ、こっちにはアレがないからなぁ、流石にこの辺りは確りと覚えちゃいないなぁ。

 それでも、とあやふやな記憶を頼りに、眉間に皺を寄せながら背を丸めて書類にペンを走らせようとしていた提督は、しかし突如固まった。
 
「確か、この配分だった筈よ」

 加賀が、その書類に各資材の消費数を記していく。提督の背後から。提督の頭に乗せて、としか言えない姿で。加賀の何が提督の頭に乗っていたかは、言う必要も無いだろう。
 提督は慌てて机に伏せ、加賀の豊かなそれから逃げる。机に突っ伏した間抜けな姿で、提督は目を閉じて声をあげた。
 
「加賀さん、心臓に悪いよ……」
「そう……?」

 加賀は真っ直ぐと背を伸ばし、机にへばりつく提督を見下ろす。提督は首だけ動かし、背後にいる加賀に目を向けた。視線が交差した二人は、それぞれの反応を見せた。加賀は腕を組んで窓の外をみつめ、提督は癖なのだろう、頭をかいていた。
 
「……扶桑」
「はい?」

 突然とある航空戦艦娘の名を零した加賀に、提督は首を傾げた。加賀は窓の外を見つめたまま、提督の言葉に応える。
 
「窓の外の道に、扶桑が居たわ」
「あぁ、なるほど……」
「妹は第一艦隊旗艦、彼女も準一軍メンバー……立派なものね」
「うん、彼女達にはいつも助けられているよ。なんというか、扶桑さんなんて数少ない癒し枠の人でもあるしねぇ」

 偶に執務室に妹と共に来る扶桑の佇まいを思い出したのだろう、提督は笑みを浮かべた。その言葉に、加賀は窓から視線をそらし、俯いた。その
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