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執務室の新人提督
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も、何もしないで食べる飯は旨いか、と聞かれる人生を送っていても私はかまいません」
「おいやめろ」
「どんな形でも……私達の提督は貴方です。貴方こそが、貴方だけが、私達の提督です」

 おもむろに、初霜は提督から身を離した。自然、両者の顔は離れていく。呆然としたまま、提督はあぁ、と零しながらうなずき、初霜は
 
「貴方の元に来たのは、皆それぞれだけど……私達は、貴方が提督で、司令で、良く分からないままの想いでも、それで良いと決めたんです。それだけは、否定しないで下さい」

 ささやいた。
 
「……当人にも分からない想いを、ねぇ」

 提督は頭をかいた。分からない、分からない。何もかもが、そんな調子だ。彼の周囲は。
 かつて帝国海軍に在った艦達が少女の体となって再び現世し、提督と言う何かの資格を持つ人間の元で喜び、怒り、哀しみ、楽しむ。死地に誘われ様と、地獄へ送られようと、彼女達はそこに佇むだけだ。ただ、提督の傍に、と。
 その根源は、彼女達にも理解できぬ物で、少女の姿である事も彼女達には理解できぬ事で、当然、他者にはもっと分からない事だ。
 
 ――当初は、さぞ疑われた事だろうさ。

 提督は腹の中で当時の世相を予想し、多分当たりだろうと笑った。実際、その通りであった。自身にとって都合のいい物を求めるのは万国共通人の欲だ。都合が良すぎると疑うのが万国共通人の性だ。自身の欲と世間の性の曖昧な中間を探し出し、自分が納得できる間を見つけてやっと理解出来る。
 
 そういった点で見れば、艦娘達の歪さはよく理解できた。歴史的期に見れば人類のパートナーとなった犬の様である。が、犬ではない人間の形をした艦だ。おまけに、それは少女の体と心を持つ。しかも、見目麗しい。
 分からない、が当然の生き物だ。判然とするべきではない存在とも、提督には思えた。
 
「兵器か人かで分けても、ろくな事になりそうにないなー」
「提督……」

 提督が零した言葉に、初霜はただ開きかけた口を閉ざしただけだ。
 
 ――なんでこんな話してるだい、僕らはさ。極楽トンボがせめて今くらいはお似合いだというんだよ、なぁ。

 提督は隅に置いてあった新聞から覗く、はにかんだ顔の少年提督に唇を歪ませ、
 
「かまうなよ、初霜さん」

 苦笑を浮かべた。
 脈絡の無い提督の言葉に、初霜はまたしても首をかしげ、そんな初霜を視界に納めながら提督は声を上げた。
 
「へいへーい」
「――え?」

 小さな声だ。
 
「ひえー」
「……え?」

 普通の声だ。
 
「ひゃっはー!」
「――……え?」

 大きな声だ。
 それも、両手を広げてのパフォーマンスつきである。いきなり奇声を上げ、らしからぬ事をやって見せた提督に、
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