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です。その資格、というのも未だはっきりとしていません」
その判然とせぬ何かを持つ提督だけに、艦娘は従う。故に、軍は提督と言う存在を軽くしたのだ。資格保有者なら誰もが提督になれる程度に。
提督は隅に在る書類へ目を飛ばし、なるほどと鼻を鳴らした。簡単な訳である。当然だ。これは飽く迄提督と言う存在をその程度だと理解させる物で、本当に必要な書類などは、例えば大本営が各鎮守府、警備府等に配備した大淀に処理させているのだろう。
「今度大淀さんに何か送ろうかなぁ……」
「金剛さんとかと修羅場に発展してもいいなら、良いと思いますよ」
「っべー、まじやっべーわ」
意味不明な言葉を繰りながら提督は新聞を机の隅に置いた。大淀は極めて理知的であり、金剛もまた理性的であることは提督も重々承知しているが、その手の話は理性であるとかそれまでの常識といった類の物を軽く飛び越えてくるところがある。
愛、恋、という人の想いはなかなかに枯渇しない燃料だ。それがある限り機関部は動き続け、運命とやらを左右する歯車は回り続ける。その歯車がかみ合っているのかいないのかは、提督には興味も無い事だが。
「しかしまぁ、不憫だね、そっちも」
提督の気遣う視線にさらされ、初霜は首をかしげた。後ろで結ったポニーが揺れ、提督はなんとなくそれが初霜の肩に掛かるのを見届けてから瞼を閉じた。
「何か分からない物で、君達は"提督"に縛られている……いやはや、ご愁傷様だよ、申し訳ないねぇー」
提督は肩をすくめてそれだけ口にすると、目を開けた。
「――え?」
そして、驚いた。
提督の目の前に、初霜の顔があったからだ。大きな赤い瞳、小さな鼻と柔らかそうな唇、それらが提督の前にあったからだ。
「は、初霜さん、ちか――」
「ぷっぷくぷー」
提督が初霜に近すぎると文句を言う前に、初霜が提督に言葉を刺した。
「え?」
意味不明な言葉で。
いや、意味不明ではない。この鎮守府にも所属するとある睦月型駆逐艦娘の口癖の一つだ。だがそれは、少しばかり特徴的であり、提督からすれば初霜の口から出ると温度差の余り眩暈がするだけなのだ。
「へいへーいでも、ひえーでも、ひゃっはーでもかまいません」
「え、なにそれは」
「例えて提督が、突然それらの奇矯な雄たけびを上げて鎮守府の廊下を走り回っても、私はかまいません」
「やめよう初霜さん。各方面にナチュラルに喧嘩売るのはやめよう。あと僕はそこまでストレスためてないから」
初霜は提督の言葉に、更に顔を近づける。提督の双眸に映った初霜の顔がまた大きくなり、提督の瞳の中に初霜の瞳が映りこんでいた。
「提督がぶくぶく太っても、特別海域で毛根が死滅してしまって
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