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「出来れば、いつもやって欲しいんですが」
「無理、それやったら引きこもる」
「どこにですか」
すでに執務室に引きこもっている提督である。これ以上どこに引きこもれるのかと初霜は純粋に疑問を抱いた。
「ここ」
と提督は自身の寝そべる机を指差した。机の下に引きこもるという意味だろう。
「止めてください。そんな事したら、鳳翔さんと雷さんを呼びますよ」
「やめてくださいしんでしまいます」
初霜が名を上げた二人は、大抵の鎮守府、警備府等の提督に愛される、または提督を愛してやまない艦娘であるのだが、初霜の所属する鎮守府の提督はこの二人に――と言うよりはこの二人にも――弱いらしく、机から身を起こして涙目になっていた。
「それにしても……山城さんは大丈夫なんかね、あれ」
編成を許可しておきながら、提督は山城の姿を思い出しつつ首を叩いた。
あれは普通、艦隊行動に支障が生じるレベルなのではないかと、今更ながら心配になってきたのである。昨日は大丈夫だった。その前も大丈夫だった。だから今日も大丈夫。
といかないのが人であり仕事だ。
「大丈夫ですよ。山城さんは第一艦隊の旗艦なんですから」
「そうかい?」
「そうですよ。海に出れば、あの人は切り替えます」
初霜の言葉に提督は、そんなものか、と納得したが、その話題でもう一つ思い出して呻いた。
「……やった方がいいんだろうけどねぇ、あれも」
提督は窓から見える空を見上げながら、ぽつりと口にした。
彼らが行った、第一艦隊の艦娘達の――そんな大それた物ではないだろうが、観艦式である。今日戦場へ行く者に、提督が声をかけるのは間違っていない。いや、間違っていないどころか、そうしてしかるべきだ。最終的な決定権は提督にあった以上、彼女達を海上に送り出したのは提督なのだから。
しかし。それでも。
――違う。
提督は大きく息を吐き、隣にいる初霜を見た。初霜は泰然とそこにたたずみ、提督を静かに見つめていた。
「……仕事といきましょう」
「はいはい。今日も一日頑張りましょうーっと」
初霜の言葉に、提督はペンを取り、机の上にあった書類を一枚、手に取った。
――わがままだ。
提督と初霜は、胸中で同時に呟いた。
仕事を覚え慣れ始めた提督と、それを助ける秘書艦がいれば簡単に片付く事もある。早々に終えた書類を机の隅に追いやり、提督は時計を見上げる。まだ早い時間だ。となれば。
「はい、提督。お茶と羊羹です」
「あー、ありがとう初霜さん」
いつの間に用意していたのか、初霜は提督の分を机に置き、自分は書類を纏めて扉へと向かっていく。
「では
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