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や長門に編成を任せても、だいたい彼の好んだ編成で返ってくるのだ。この日も、そうであった。もちろん、提督がそれを拒む理由は無い。無いはずだが。
ぷるぷると震える山城と、何ともいえない顔で立つ提督の目が合い、瞬間、二人の目に力がこもった。
なんて事するのよなんて事するのよ。またこれなの? なんでまたこれなの? これ隣の人これあれよ、あれなのよ? 5500トン級の艦体で弩級戦艦に突っ込んでくる意味のわかんない、えーっと……あれなのよ? わかってるの、その頭には何がつまってるの? 脳みその変わりに別の物はいってるんでしょ? ばかなの? しぬの? っていうか私胃に穴空いてしぬわよ? あぁ……空はあんなに青いのに……。
いやー、なんと言うかこの編成、僕にとっては艦隊の安定感半端ないのよなー。多少限定的なのは認めるけどあきらめて欲しいかなーって。あと神通さんはほら、山城さんを信頼してほら、あの、突っ込んでいっただけで、な、ほら? うん、あぁ、な? お、そうだな。あ、うん、明石の酒保に豆乳あるって隼鷹から聞いた事あるから、飲むと良いとおもうのよ、僕。あれ胃に優しいから。あとお姉さんのセリフとるのはやめようか?
この間一秒。それぞれ山城の念と提督の念である。一切口は動かしていない。
だと言うのに。
「それ本当?」
「胃に膜を張るから良いんだってさ。守ってくれるって訳かな」
「へぇー……姉様にもお勧めしておこうかしら」
しっかりと通じ合っていた。
突然口を開いて意味不明な会話を始めた提督と山城に、その場にいる全員が何も言わない。見慣れた光景だからだ。
こほん。
と小さく咳一咳し、提督は第一艦隊をもう一度見回して頷いた。
「皆の活躍と、無事を願うよ。よし、お互いお仕事始めようか」
締まらない提督の言葉に、その場に居た全員が背を伸ばし海軍式の敬礼を提督に見せた。提督も慣れぬ様子で敬礼を返し、それを見届けてから第一艦隊の面子は執務室から一人、また一人と去っていく。そして最後、白い着物と赤く短い袴姿の背に、提督は声をかけた。
「山城さん」
「……なんですか、提督」
幽鬼の如く。まさにそれ以外の例えが出ないほどのオーラと相で、ゆらりと山城は振り返った。青白い火の玉でも周囲に飛ばしていそうな山城の姿に、提督は
「いってらっしゃい」
とだけ言った。
山城は提督の顔をじっと見つめた後、小さく頷いて退室していった。続いて、大淀が提督に一礼して部屋から出て行く。これから、港で具体的な話をするためだろう。
「あぁー……こういうの、いるのかなー? いや、わかんだけどねぇ」
椅子に座ると同時に、提督は執務机に体を預けた。初霜は提督の姿に苦笑で返す。
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