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今しがた買ったばかりのそれを、袋から取り出して勢いよく齧り付いた。味を確かめるようにゆっくりと咀嚼し、嚥下する。
「あぁ、やっぱ旨いわぁー」
龍驤は口元を綻ばせ、今しがた明石の酒保で購入した肉まんを平らげに掛かった。
――うまうまやなぁ。赤城や加賀がこっちに夢中なんも、わかるなー。
龍驤はうんうんと頷き、一人歩いていく。
彼女は食道楽にさほど通じては居ないが、かと言って興味が無い訳でもない。人型――艦娘になってから、彼女の周囲には様々な未知があった。人として在る為のデータは入っていたが、人として動くためのプログラムはまだ未発達であったからだ。
一つ動き、一つ確かめ、龍驤は自身に合う事と合わない事を覚えていった。食べ物、ファッション、思考、趣向、行動。或いは、龍驤という艦娘の竜骨を確固たる物にするための日々。
すべては、手探りであったが、彼女は彼女として龍驤の容を満足できる型で形成させる事に成功した。少なくとも、彼女に不満は無い。
指についた麺麭を舌で舐めとり、腕に抱えた袋からもう一つ取り出そうとして、動きを止めた。そのまま、特に確かめる事も無く龍驤は声を上げた。
「なんやー、うちになんか用かー、青葉ー」
「ありゃー……恐縮です、青葉ですー」
果たして、龍驤の背後からひょいひょいと姿を現したのは、ペンとメモを手にした重巡洋艦娘の青葉であった。
「お聞きしますが、なんでばれたんでしょうか?」
「空母相手に、何を言うてんねんな。陸でも、艤装なしでもこれくらいやるんが、うちらや」
「なるほど」
納得、と頷く青葉であるが、流石に顔は引きつっていた。当たり前だ。空母ならこれくらいやる、と龍驤は至極当然と答えたが、青葉が知る限りこんな芸当が出来るのは龍驤の他には鳳翔だけだ。
青葉の記憶では、赤城を始めとした正規空母達でも、もう少し接近できたし彼女の姿も確かめず言い当てられた事はない。あえて言うなら、利根に気配を察知された事があったくらいである。
「流石、我が鎮守府最古参の軽空母のお一人ですねー」
「鳳翔さんとはなー、建造された日も同じ、ここでの進水日も同じ、錬度も同じやからねぇ」
龍驤はしみじみと呟くと、色んなとこ一緒にいったなーと遠い目をしながら袋から取り出した肉まんを青葉に差し出した。
「さっき酒保で買ってん。食べる?」
「あ、これはどうもどうも」
青葉はメモとペンをどこかへさっとしまいこみ、龍驤から肉まんを受け取って一口齧った。
頬に手を当て、んー、と目を細める。
「美味しいですねー」
「ほんまになー。明石と提督に感謝やなー」
そう言って、龍驤は袋からもう一つ肉まんを取り出し口にした。
「空母の人
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