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終えると暇であるのか、提督が口に運ぶおかずを見ては、それは誰が、これはあれが、と邪魔にならない程度に喋ってくる。
「あ――」
初風の小さな呟きを耳にした提督は、首をかしげて彼女に顔を見つめた。彼女の目は、ただ一点、提督の箸に摘まれた芋煮を凝視している。はて、なんであろうか、と口を開きかけた提督は、突如彼女が何型の駆逐艦娘であったかを思い出した。
陽炎型駆逐艦。
あぁ、居たではないか。あぁ、潜んでいたではないか。
提督は真っ青な顔で初風を見つめ、初風も提督を見つめる。二人は何一つ口にせぬまま、ただ同時に頷いた。
提督はゆっくりと芋煮を弁当箱に戻して、目を閉じた。どこからか「てけりり」と聞こえたが、提督は鋼の意志でそれを黙殺した。決して弁当箱からの方からではない。そう信じた。
「危ないな……危なすぎるぞ君の妹……」
「凄いわね……作ってるときは、普通だったのに……流石武勲艦は違うわ」
初風は顎を手の甲で拭い、くっ、と唸った。
「妙高姉さんの次くらいに怖いわね」
それでも不動のナンバー1である妙高は、どれほど恐ろしいのかと慄く提督であった。
恐ろしいこともあったが、時間は流れる。
提督は、ゆっくりとコップを仰向け、中身を嚥下し……とん、とコップをテーブルに置いた。両手を合わせて、一礼する。
「ごちそうさまでした」
「どういたしまして」
広げられていた自身の弁当箱と、何かカタカタと動き出した提督の弁当箱を片付けながら、初風は執務室を見回す。
「ここ、本当に変わったわね」
「まぁ、ねー」
頭をかきながら答える提督に、初風は呆れ顔を見せる。
「洗面台と、あとあれ、お風呂でしょ?」
「バストイレだね」
「ユニットバスってやつ?」
「それ、誤用なんだってさー」
「へー」
興味を惹かれたのか、初風はソファーから立ち上がると、提督が言うバストイレの方へぱたぱたと向かっていった。
「へー……ねぇ、これ誰に作ってもらったのー?」
風呂場特有のエコーが掛かった初風の声に、提督は肩をすくめて答える。
「明石さんと、妖精さん達、あと、北上さんと夕張さんがちょっと応援に来てくれたよ」
「なるほどねー」
一頻り覗いたら満足したらしく、初風は自身の首を擦りながらソファーに戻り、腰を下ろそうとして――止めた。
「そろそろ時間、よね?」
「ん……あぁ、そろそろ初霜さんが来る頃だねぇ」
つまり、仕事の時間だ。初風は提督の言葉に、提督と自分のコップを手にし、洗面台で歩いていった。それを軽く洗ってから、布巾を手に戻ってくる。テーブルをさっと拭き、それもまた洗面台に戻す。前もって片して置いた弁当箱を手に、初風はドア
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