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「何よ? 嫌いな物でもあったの?」
「いや、特にはないけど……んー?」
「そう、じゃあ早く食べなさいよ。そっちの出汁巻きなんて、どこかの軽空母の猛攻を凌いで、陽炎姉さんが作ったのなんだから」
「たべりゅー」
「殴るわよ」
じろり、と横目で提督を睨んだ初風は、一旦弁当をテーブルにおいてお茶を手にし、軽く飲んでから再び弁当箱を手にして食べ始めた。
提督はそんな初風を、横目で眺めてから、ようやく箸を動かし始める。最初に口に運んだのは、初風曰く陽炎作の出汁巻きだ。
「旨い」
「当たり前じゃない。我らが陽炎姉妹のネームシップよ。伊達じゃないんだから」
提督の感想に、初風は胸を張った。自慢の姉が褒められたのが嬉しいのだろう。綻んだ顔は実に少女らしい相である。常々、どこか憮然とした印象を与えがちな初風にしては、意外な相と言えるだろう。
とはいえ、流石にそれを口にしてしまうほど提督は愚かではない。彼は白米、おかず、白米、おかず、と次々に弁当箱の中を口に入れて租借して嚥下していく。
――実際旨いんだけれどもねー。
実は、悩みもある。
華も恥らううら若き乙女達の手によって調理された食材を、若い胃は拒まない。拒みはしないが、しかしどうにも、多いようにも提督には思えるのだ。提督は、ちらり、と初風にばれないよう隣を流し見た。その提督の視線の先、初風の手にある弁当箱は、普通の弁当箱である。駆逐艦娘は艦娘の中でも潜水艦娘に次いで食事量が少ない。もちろん個人差はあるのだが、初風の食事量は平均的な駆逐艦娘の物である。では、対して提督の弁当箱はどうであろうか。
――でかい。
提督は自身が今手にしている弁当箱を見下ろして、胸の中だけで呟いた。本当に、でかい、というべき代物である。どこぞの野球少年が持っている様な大きな銀色の弁当箱。更に恐ろしいことに、それがもう一つ、提督の前に置かれている。
白米八割、おかず二割で弁当箱一つと、おかず十一割の弁当箱が一つである。一割はサービスであるから問題ない。
若い男と言えど、朝から腹に詰めるにはなかなかに苦しい量であるが、それが入るのもまた若い男特有の胃袋で在る。そしてまた艦娘達も、艦時代の記憶のせいか、若い男は沢山食べると信じていた。実際大人四人前くらいはぺろりと食べてしまえる提督もその時代には実在した訳であるが、だがしかし、だがしかしである。それは軍人である若い男と飛龍さんとこの多聞君の話だ。執務室に引きこもるインドア人間代表の様な男では、比べる事自体が間違いだ。
――今日も空いた時間で走り込むかなぁ。
執務室の隅に在るルームランナーを視界の隅におさめて、提督は弁当箱を平らげにかかった。そっけなく見える初風も、流石に自分だけが食べ
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