暁 〜小説投稿サイト〜
執務室の新人提督
05
[4/4]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
の……」
「言わせたくない?」
「聞きたくは、無いと……思います」

 続くはずであった提督の言葉を遮った眼光は瞬時に消えうせ、今の神通の瞳は常の深く静かな物である。それを確かめてから、提督は自分の膝を叩いて立ち上がった。
 
「じゃあ、片付けようか。どうにも僕は、ダイエットでは走れても、趣味や訓練となると、やっぱり走れない物であるらしいや」







 提督が窓から見える夜空を眺めていると、ドアがノックされた。これもまた控えめな音であるが、提督の耳には昼のそれとはまた少しばかり違って聞こえた。

「はい、どうぞ」

 間を置かず扉は開かれ、提督が一番見慣れた少女が執務室に入ってきた。
 
「提督、ただいま帰還しました」
「ん、お帰り。怪我とか、そういうの、大丈夫ー?」
「その……翔鶴さんが中破で、今入渠中です」
「バケツ、使っていいよー」
「はい、それで戦況報告ですが」
「はいはい、お願い」

 海域の情報、問題点、敵の戦力、それらを一応聞いてから、提督は"らしく"頷いて見せた。
 
「お疲れ様だね」
「ご苦労、と言って下さい」

 目上として振舞え、と言外に語る初霜に提督は、ふふんと得意げな顔で

「僕はいつだって甘えるのさ。なんたってインドアだからねー」

 そう笑った。

「今日はまた一段と意味が分かりません……」

 困った顔で呟いた初霜は、なんとなく室内を眺め、そこに見慣れない物がある事に気づいた。
 
「あの、提督、あれは?」

 初霜の指さす先に在るそれを少しばかり意地悪げに見つめて、

「貰ったんだ。上手にお黙り出来たご褒美にってさー」

 提督は笑った。


 
 執務室の隅に、ルームランナーが一つ、ぽつんと在った。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ