6部分:第六章
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第六章
「当たり前だけれど」
「それでも。会長のお家っていえば」
「家は関係ありませんわ」
また沙代子が答える。
「そういう問題ではなく。大切なのは」
「家に招くことですか」
「その子を」
「以前から決めていました」
優雅な声だがそこには確固たる決意がはっきりとあった、
「お付き合いする方はまず家にお招きしてそれで」
「それで?」
「どうされるんですか?」
「お父様とお母様、それにお兄様達に紹介させて頂こうと」
「紹介って」
直弥は今の沙代子の言葉を聞いてこれはえらいことになってしまったとさらに思うのだった。そいじょそこいらのえらいことではないと。
「あの、いきなりですか」
「それが道理ではないのですか?」
やはり沙代子の言葉は平然としたものである。
「お付き合いするには。やはり家族に話をしてから」
「それはそうですけれど」
「御安心下さい」
沙代子はまたしてもきっぱりと直弥に告げてきた。
「既にお父様達にはお話しています」
「もうなんですか」
「笑顔で認めて下さっています」
そちらももう話がついているということであった。驚くべき速さであった。
「お話させて頂いたら。つまりです」
「つまり?」
「一文字様が心配されることは何もないのです」
またあの穏やかで気品のある笑みを彼に見せるのだった。
「何一つとして」
「そうなんですか」
「ですから。どうぞ」
あらためて彼を誘ってきた。
「お車に」
「いいんですよね」
慎重になって沙代子に尋ねる。こう言われてもまだ少し怖かったからだ。
「本当に。一緒の車に乗って」
「また申し上げますが私は嘘は申しません」
強い言葉になっていた。
「ですから。さあ」
「わかりました。それじゃあ」
ここでそのリムジンが来た。後はこれに乗るだけであった。
そして直弥は乗った。女の子達が呆然とする中を。それに乗り後は沙代子に言われるまま彼女の家族と会い挨拶をして夕食に加わるのだった。程なく彼女の交際相手となった。
だが自分の家に送ってもらっている時に。前に乗る彼女の執事から声をかけられたのであった。
「一文字様」
「はい?」
「一つお話させて頂きたいことがあります」
顔は前を向いたままだが声は笑っていた。彼はリムジンの助手席に座っている。運転はそれを専門にしている運転手が行っていた。
「宜しいでしょうか」
「あっ、はい」
何が何なのかわからないまま応えた。今は沙代子は車に乗ってはいない。家にいる間はずっと彼女のサポートを受けてあらゆることをこなしていた。何しろはじめて見て経験する上流階級のことなのでそれを経験してくたくただった。その中で応えたのである。
「何ですか?」
「お嬢様のことです」
執事
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