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いる艦娘は意外に多く、その当時の逸話や繋がりで強い絆を持つ艦娘は決して少なくない。神通などはその最たる例で、二水戦所属経験の駆逐艦娘からは、大いに慕われ――同程度には、恐れられている。あと神通が走り込みを行っている姿を偶然見てしまった山城が「ヒェッ」と真っ青な顔でこぼしてふらふらと倒れたのはこの話に本当に関係ない上に可哀想。
「上司ねぇー……初霜さんの場合だと、阿武隈さんと、那智さんと、霞さん……矢矧さん?」
「それと、伊勢さんと日向さんですね……この人達にお願いされると、どうにも断れなくて……」
まぁ困った事をお願いされたこともありませんけれど、と初霜は困り顔で笑った。
「そのうち、日向辺りが瑞雲がどうのこうのと言わないでしょうね……」
「そこは秘書官の仕事ではなく、提督のお仕事ですよ?」
「え、じゃあ僕に直接くるのか、それ」
「あるとすれば、だけどね」
「でもなぁ……言われても、扶桑さんと山城さんから、装備むいて、はいどうぞ、なんて出来ないしなー」
「扶桑はともかく、山城は暴れそうね」
「……」
「何?」
霞は黙りこんだ提督の顔を半眼で見つめ、言いなさいよ、と顎をしゃくった。提督は軽く頷くと、何やら真剣な面持ちで口を開いた。
「神通さんに間に入って貰えば……」
「やめたげなさいよ!? あんた山城死ぬわよ!?」
黒髪の子かわいそう。
「ほんっとにもう――……あぁ、初霜、そろそろ夜番がくるわよ」
霞の言葉に、初霜は執務室の壁に備え付けられた時計へと視線を向ける。それが示した時間は確かに霞の言う通りで、このまま部屋に留まっていては霞はもちろん、秘書艦の初霜でさえ"停戦協定"に触れてしまう事になる。
「提督、そろそろ時間ですから、片付けましょうか?」
「あぁいや、僕でやっておくよ。二人とも、ありがとうねー」
「ふん……あたしは何もしてないわよ」
「それでも、だよ」
「あぁそう」
初霜の手を引っ張って、霞は少しばかり乱暴に扉を開けて部屋を出て行く。
ただただ霞に引っ張られたままの初霜は、霞に何か言おうとして、止めた。彼女の耳に、僅かばかりの声が響いたからだ。
「嫌になるわね」
常らしからぬ、霞の弱い声。それがまだ初霜の耳に届く。
「司令官あってのあたし達、そうじゃない」
「はい」
応じた初霜に気づいているのか、いないのか。霞はまだ初霜の手を引っ張ったまま、続ける。
「あたし達あっての司令官? 本当に? ……たぶん、ちがうわ」
答えなど求めていない霞の声が、初霜には苦しかった。
汽笛の一つでも鳴らせば、気でも晴れるのだろうか。艤装もなく、艦でもない少女の体を持った初霜は、霞の手を握り返すくらいし
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