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執務室の新人提督
03
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てましたし、ちょっと暇でしたから」
「ふーん」

 初霜の言葉に、霞は執務机に近づき机上にあった書類を数枚手に取った。流し読み、鼻から、ふん、と息を吐くと提督に向き直る。
 
「仕事、覚えた?」
「うん、みんなのおかげだねー」
「体の調子は?」
「問題ないよー?」

 気の抜ける提督の返事に、霞は目を細め、顔を初霜に向けた。

「初霜?」
「はい」

 頷く初霜を十秒ほど見つめてから、霞は肩から力を抜いた。そして、もう一度提督に向き直る。
 
「ご飯はちゃんと食べてるの?」
「うん、母さん」
「違うわよ」
「でも、そう呼ばれても仕方ないんじゃ」

 小さな初霜の呟きも、霞の耳には確り聞こえていた様で、霞は再び初霜に顔を向け、

「毒されない」
「はい」

 注意した。

「まったくもう、初霜まであんな風にぴこぴこする様になるなんて、初春が知ったら――」
「あ、初春姉さん、スマホでゲームしてますよ?」
「え、えぇええええええええええええぇー?」

 いや、似合わないわけではない。彼女の艤装は近未来的な物であるから、現代利器の一つや二つ、身に持って可笑しい訳ではないのだが、似合わないわけではないのだろうが……普段の言動から見ると、なかなかに繋げ難い。ちなみに若葉は任○堂派で、子日はゲーム機全部派である。セ○・マー○Vが当たり前に在る。それが駆逐艦娘寮初春型部屋クオリティーなのだ。

「ちなみに、初春さんはどんなゲームを?」
「えーっと……子日姉さんが言うのには……乙女ゲーとか」

 ネームシップは自由奔放であった。

「やだ……なんかちょっと頭痛い……」
「大丈夫かい霞さん? 頭痛が痛いのかい?」
「ほんっとに痛くなってきたじゃない、このクソ提督」
「それ人のだよ?」
「う る さ い」

 提督と霞から一歩離れ、初霜は霞用にとお茶を用意し始める。霞は二人分のお茶とお菓子を用意しただけで、自分の分を出していなかったからだ。
 執務室に設置した小型冷蔵庫の中から冷えたお茶を取り出し、霞用の水色のプラスチックコップにお茶を注ぐ。その間もなにか会話を続けている提督と霞を見て、初霜はころころと笑った。
 
「……なによ、初霜」

 半眼で彼女を睨む霞に、初霜は笑ったまま応じる。

「だって、上司同士の仲が良好なら、部下としては嬉しいじゃないですか」

 と、面白い事が起きた。提督と霞が、同時に頭をかいたのである。お互いそれに気づかず、ただ一人気づいた初霜は、笑い出す訳にもいかずただただ堪えた。
 
「あたしと貴方が部下だったのは、ほら、"前"でしょ?」
「まぁ、そうなんですけれど」

 この辺りは、何も初霜に限った話ではない。艦であった頃に引っ張られて
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