はて迷外伝 最強の剣と最強の盾2nd
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ファミリア】の名前など忘れ果てた頃、彼は街の小さな酒場を切り盛りするオーナーになっていた。
いずれ自分の店に『想願』を継ぐに相応しい者が現れた時に、自分がロートルになっていては世話ない。オラリオの生の情報が集まる酒場は世俗から離れすぎないため都合が良かった。厳ついトールが酒場を切り盛りする姿を「落ちぶれた」笑う者もいれば、そんなことは気にせず常連になる者もいた。
そして、もう『想願』を継ぐに相応しい者など自分の前には現れないかもしれないと思い始めたその頃――少女は現れた。
「……テメェ、クソガキ。今、何て言った?」
「あんたみたいな落ちぶれ者が幅を利かせるような腰抜けファミリアに、どうして私が入らなければならないのか。そう言ったのだけれど?」
栗色の髪の少女が、ガラの悪そうな男達に毅然とそう言い放つ光景が、目に映った。
「あのね、私はいずれ剣王になる女なのよ?安くないの。王に仕えるだけの志もないアンタみたいなしょーもない男をはべらせてるような誇りもないファミリアに用はないのっ!」
「………はぁ?剣王?お前みたいな田舎者丸出しの小娘がぁ?………ぷっ、くくくくっ!!ぶわ〜〜〜っはっはっはっはっはッ!!」
どっ、と男の周囲が爆笑――あるいは嘲笑の渦に包まれた。
「バッッッカ丸出しだなお嬢ちゃん!!お前みたいな細っこい小娘が王様だぁ!?おままごとのしすぎで頭がハッピーになっちまったのかァ!?」
「イヒヒヒヒヒっ!!いるんだよなぁ、君みたいな夢見がちな乙女ってのがさぁ!?そういうのこの街でなんて言うか知ってるかぁ!?………み・の・ほ・ど・し・ら・ず!!アーッハハハハハハ!!」
「俺達は今までに何人もお嬢ちゃんみたいな脳みそお花畑の新人を何人も見てきたがよぉっ!!くくく……みぃんな辿る結末は二つに一つだぁ!!」
「身の程を知らな過ぎてくたばるか、身の程を思い知って惨めに冒険者を続けるかだっ!!ぶふふッ……だぁ〜っはっはっはっはっはっは!!」
「くくくっ、お前らそんなに笑ってやるなよぉ、可哀想だろぉ!?」
「おう嬢ちゃん!お前さんは冒険者よりその妄想を垂れ流す吟遊詩人か作家にでもなった方がいいんじゃないか!?ぎゃはははははははっ!!」
口々に夢をあざ笑う男達を少女は鋭い目つきでゆっくり見回しながら、無言で立ち尽くしていた。彼女と同じテーブルには、同じ年頃の少年が無言で食事を取り続けていた。助け船を寄越す気配は一切なく、我関せずと言った様子だ。
冒険者にはよくあることだ。冒険者になれば英雄になれるなどと誰が吹聴しているのか、結局この街でも特別な強さを持つのは特別な才能のある者だけ。その現実を知らずに井の中の蛙となり、水に溺れる哀れな若者たちをトールは知っている。
こういったと
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