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執務室の新人提督
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団を持ち上げ、前もって開けておいた窓へと向かい、干しにかかる。
 
「この部屋の窓が大きいから、こうやって干せますけど……やっぱりベランダかお庭で干したほうがいいと思いますよ?」
「でも、ここにはベランダないし、庭となると、誰かに持っていって貰うって話でしょー?」

 寝ぼけ眼のまま、提督は頭をがしがしと少しばかり乱暴にかきむしり、やっぱりそれは、と口を動かした。

「駄目だな。嫌だ。僕の事でそこまでは、駄目だ」

 確りとした声音である。こうなると、これ以上は無理だ、と初霜は感じ、ちょっとばかし頬を膨らませた。年相応、実にらしい姿である。
「じゃあ、してもいい事はしますよ?」

 布団を干し終えた初霜は、櫛を手に取り、だらしなく床にあぐらをかく寝ぼけ姿の提督の後ろへあっさりと回り込んで、髪を梳かし始める。
 
「慣れてるねー」

 先ほどの様子はどこへやら、むにゃむにゃと夢見心地のまま無防備に佇む提督へ、初霜はにこりと笑った。

「うちの姉妹は、若葉以外みんな髪が長いですから。時間がないときなんかは、皆で手伝ったりとかしますよ?」
「あぁ、なるほどなー」

 撫でるように髪を梳き、見れる程度には髪形を整え終えた初霜は、今度は室内に置いてるクローゼットから、提督が今日着る第2種軍装――見慣れた白い軍服――を取り出し、余計な皺がよっていないか確かめながら、執務室にあるソファーに掛けていた。その姿をなんとはなしに眺めている提督に、いつの間にやら箪笥からシャツやトランクスと靴下を引っ張り出し終えた初霜が、声をかけた。
 
「朝のお弁当、初春姉さん入魂の炊き込みご飯をはじめ、それぞれ初春型皆の気合の一品ですよ」
「子日は何つくったのかなー?」
「子日姉さんは、ハート型の鯖の味噌煮ですね」
「やだちょっと怖い」
「若葉はハート型の麻婆茄子です」
「それハート型にしていいの?」
「私は、ハート型の北京ダックなんですけれど」
「やだはつはるがたってなんかこわい」
「では、私は食堂に行って来ます。0800から、仕事に参ります」

 ぴしり、と海軍式の手のひらを見せない敬礼を提督に送り、初霜は退室して行った。
 去っていく小さな背を見送り、軽い軋みをあげて閉まる扉を、起きたばかりの半眼でねめつけてから、提督は初霜の置いていった弁当を探した。
 
 探した、などとは言うが、朝の弁当当番である駆逐艦達は皆同じ場所にそれを置いていく。見やすく、分かりやすい、という点で選ばれた、提督の執務机の上である。
 白い布に包まれた弁当を手に取り、布をほどいていく。するりするりとほどけていく布を簡単に畳んで隅に置き、提督はなんとなく唾を嚥下してから蓋をあけた。
 
「……」

 そこにあったのは、初霜の言葉通りの
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