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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
外伝 黒の修羅 前編
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の命の価値が同じとなぜ思う。そもそも……同じ命が一個でもあるというのかッ!?
 命の価値は平等、同じ重みだと?……痴愚の戯言だ。
 俺たち日本の軍隊にとって日本人の命以上に重い命があっていいわけないだろうがッ!!!俺たちは何を守るために存在しているッ!?」


命の価値は平等ではない、相対的に変化するものだ。
たとえ話をしよう、Aという人間が居た。
其処にBという見も知らぬ人間が通りかかった、そのBにはCという恋人がいた。

さて、このBという人間の命の価値はAとCでそれぞれにおいて同価値を有しているだろうか?
答えは否である。

Bという人間が不慮の事故、病気などで命を落としたとしても、それはAからすれば赤の他人の出来事であり、その死にも生にもさほどの興味も無くAという人間の人生に寄与することは殆どないだろう。

だが、Cにとっては違う。
自身にとって掛け替えのない命の喪失、それはCの人生に大きな影響を及ぼすだろう。その死に嘆き悲しむだろう。

この反応を見てわかる様に、人間の命とは平等ではない。絶対値で価値が決まっていてその全てが同じというものではない。

誰に、或いは組織にとってどういう人間かによってその命の価値は変化する。
正義と同じく、人命とはその価値が多様に変化する非常に曖昧なものでしかないのだ。

其れを差し置いて、やれ平等だ尊重だ―――現実を見れぬ阿保の戯言だ。理論が無い、実証が無い、よくそんな出鱈目を吐けるものだ。感心すら覚える。


「それはわかってる……けど!守りたいんだよ!!」
「では奴らを救うために戦力を割き、BETAの日本上陸を許して―――お前は死んだ人間たちにどう謝るつもりか?どう責任を取るつもりか?
 可哀想だから助けました、その結果あなたたちが死ぬ未来を選んでしまってごめんなさい―――とでも謝るつもりか?
 そいつらの中には、既に逝った戦友たちの家族、恋人、友人もいるだろう。お前はそいつらに会ったとき、そいつらを直視出来るか?」

 悔しそうに睨みあげる黒の少女、それをただ凍てついた瞳で見ろ下す黒の青年。
 この青年の言葉は事実だ、血税で賄われる軍費。一人当たり数億かかる教練費用。一機当たり百億以上する機体―――それらと、国民の命を背負って自分たちは此処にいる。

 此処にいる理由は人道を守るためじゃない、この朝鮮半島の真後ろに迫った日本を守るためだ。
 びた一文払っていない連中を救うためではない。そもそも、そんな連中、この土地がこの場所になければ守る必要すらないのだ。

 それでも、守らねばならないものとして人道を挙げているが―――実際、そんなものはお荷物に過ぎない、他国の避難民の警護に戦力を割けば割くほど日本へBETA上陸の危険は増大してゆく。
 
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