3部分:第三章
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第三章
「会長のこと前から知っていたわよね」
「告白する位だから」
「はい」
そして直弥もまたそれを肯定する返事を述べたのだった。
「そうですけれど」
「じゃあ何で今驚いているのよ」
「リムジンだって見てたでしょうに」
「見ていたことは見ていました」
ここでも彼は素直に述べるのだった。
「けれど。それは遠くからで」
「近くじゃないのね」
「とても近寄れませんでした」
おっかないといった様子での言葉であった。滅相もないといった感じもそこにはある。
「だって。末月丘さんにこうして」
「側に来るだけでもってことね」
「そうです。それなのに」
近寄るなどとはとんでもない、そういった心がわかる言葉であった。
「今だって。本当に胸が」
「そう思うことはよくありません」
ここでまた。沙代子の言葉が来た。見れば彼女はまだ車には乗っておらず直弥に顔を向けていた。つまり彼の今の話も聞いているということだ。
「過度な緊張は。かえって駄目なのですよ」
「そうですか」
「何時でも平常心です」
静かな声は相変わらずであった。
「ですから。その様に緊張しては何事も成就しないのです」
「それはわかっていますけれど」
「わかっていれば少しずつ訂正していくことです」
ここで常にとは言わないのであった。
「宜しいですね。少しずつですが確実に」
堅実であるべきと考えていることがわかる言葉であった。
「それを守っていけばいいです。宜しいですね」
「わかりました。それじゃあそれも」
「少しずつです」
ここは念押ししてきたのだった。
「していけばいいですから。それでは」
「はい。じゃあ三日後にこの時間で」
「ここで御会いしましょう。それでは」
最後に一礼して車に乗り込み場を後にする。リムジンのエンジンがかかり前にと出る。それを見届けた直弥はあらためてほう、と声をあげるのだった。
「本当に凄い人だな」
「とても優しい人よ」
「頭もよくてスポーツもできて」
また下級生達が感嘆の息を漏らすか直弥に対して言ってきた。今度の言葉は沙代子を褒め称えるものであった。これはもう崇拝に近いものすらあった。
「本当に何から何まで完璧で」
「素晴らしい方なんだから」
「いいんですよね」
何故かここで直弥は言葉に返すのではなく質問してきたのであった。
「何が?」
「ですから。そんな人に」
またおずおずとした調子になっていた。その調子で先輩達に尋ねている。
「あんなことして。本当に」
「さあ」
「どうかしらね」
いいとは言っていないのであった。これは直弥にもわかった。
「じゃあやっぱり」
「正直に言うわよ」
「はい」
女の子の中の一人の言葉に応える。
「私が殿方ならば考えられ
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