2部分:第二章
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日後にこの時間でここに」
「私は間違いなくこの時間にいますので」
クールに直弥に告げる。
「遅れられることのないよう。御願いしますね」
「はい、絶対に遅れません」
直弥の言葉は必死なものであった。声にそれがはっきりと出ている。
「何があっても。本当に」
「期待しています。では」
ここで遂に迎えの車が来た。黒い大きなリムジンであった。直弥にとってははじめて見る本物の高級車であった。しかも運転手付きの。
「うわあ・・・・・・凄いや」
「驚くべきことではありません」
しかし沙代子の言葉の調子はここでも変わらない。
「驚くべきことはものに対してではないのです」
「ものにじゃないんですか」
「人に対して驚くものです」
こう直弥に告げる。告げているその前ではもう執事が出て来て扉を開けている。本当に直弥にとっては漫画で見るようなお金持ちの光景であった。
「その人の人格の素晴らしさに。ものは大した問題ではないのです」
「はあ。そうなんですか」
「貴方も殿方なら」
今時珍しい言葉であった。殿方という言葉は。
「このことはわかっていて下さい。いいですね」
「わかりました。それじゃあ」
「わかって頂ければいいです。では」
「お嬢様」
あの執事が前に一歩出た沙代子に対して声をかけてきた。実にいいタイミングだ。
「それでは。宜しいでしょうか」
「ええ、爺や」
「爺やって」
このやり取りもまた直弥にとっては驚きであった。
「間近で見たら余計に何か」
「ちょっと待って」
「あんた多分だけれど」
下級生達が直弥に問うてきた。沙代子にとっては下級生であるが直弥にとっては先輩にあたる。だから彼に対してこの言い方もいいのである。
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