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SAO−銀ノ月−
第九十六話
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俺と人狼の位置が重なった瞬間、鞘から日本刀《銀ノ月》の剣戟が煌めき、人狼の長が持っていた木槌を柄から切り裂いた。武器を失ったとはいえ、まだまだ人狼には強靱な爪も牙もあるが……俺のことを気にしてしまった瞬間に、運命は決まっていた。

「――よいしょぉ!」

 飛翔した俺のことを見ていた人狼の後頭部に、突進系ソードスキルを使ったリズの一撃が炸裂。一撃でスタン状態にしてみせると、野球のバットを扱うかのようにフルスイング。人狼の長をホームランが如く吹き飛ばし、辺りの部下に襲われる前に素早く離脱する。

「よろしく!」

「オーライ、っと!」

 ホームランボールを受け取るファンの如く。飛んでくる人狼の長を斬り裂くべく、ベストポジションに待機していた俺の一閃は、散々だった人狼の長をポリゴン片に変えていた。

「お姉さん、大丈夫?」

 幸運なことにあっさりと人狼の群れの排除に成功し、群れのほとんどを引き受けていたユウキが、まずは負傷したプレイヤーに声をかけていた。そこに人狼の長を倒した俺とリズも降り立ち、ユウキとそのプレイヤーに会いまみえる。

「あ、二人ともありがと! 数減らないなぁ、と思ったら長を倒す系の敵だったんだね」

「知ってて飛び出したんじゃないのね……」

 ボクが群れを引き受けるから二人は長を――的な電波を彼女は受信していたらしく、ユウキの言葉にリズは少し脱力する。おかげで手早く終わったのも確かだったが。

「いやー、助けられちゃったね。無限湧きならスキルのレベリング楽かな、って思ったんだけど」

 似たようなことをアインクラッドの時にキリトから聞いたことがあったが、そんなことをしていれば神経が続かない。実際、目の前の女性プレイヤーもそれで不覚を取ったようであった。カチューシャが乗ったことで際立つ真紅の髪に、色は黒色だったが、どこかメイド服を思わせる広がったスカート。それに――

「私、レインっていうの。改めて、助けてくれてありがとね?」

 ――その手に持った、二刀。

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