第九十六話
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を発動せんと右手に持った日本刀《銀ノ月》をチャキ、と鳴らし――
――俺たちの目の前に、ユウキの勝利を知らせるシステムメッセージが表示された。
「えっ」
「あ」
……熱中していて忘れていたが。ソードスキルで片腕を刺すようなダメージを負えば、もちろん初撃決着の勝利条件は満たされるわけで。
「……あんたねぇ……」
デュエル決着後にこちらに飛んできたリズには、もの凄く呆れた顔をされたものの、まったくもって言い訳のしようもなかった。
「ボクすっごい不完全燃焼なんだけど……」
「悪い悪い。でも凄かったな、さっきのOSS」
アスナが作ってくれたデザートを前にしたのに、そこで寸止めされたみたいだ――と、とてつもなく不満そうにしているユウキの「もう一回やろう!」という提案を回避する為に――何しろ非常に疲れた――ユウキの放ったOSSの話題に移る。途中までに終わったものの、その威力は最上位ソードスキル《ノヴァ・アセンション》にも匹敵するほどで――こちらの目論見を全てぶち壊し、そのまま決着にまでこぎつけるほどだった。
「うん! ボクも自信作なんだ! でも、結局ショウキのOSSは――」
その質問が最後まで紡がれることはなかった。広い草原を流れる風に混じって、ある声が聞こえてきたからだ。俺やリズ、ユウキの声ではない第三者の。
「……悲鳴?」
そのリズの疑問の声の通りに、草原に響き渡ったのは女性の悲鳴。決して遠くない距離から聞こえてきたソレに、俺たちは顔を見合わせた直後に、揃って翼を展開する。
「どっち!」
「こっち!」
音が聞こえた方を記憶していたユウキが、迷いもなくそちらに向かっていく。弦楽器のような音を響かせる翼は、すぐさまモンスターが密集していた場所へと殴り込んでいく。先程まで俺がソードスキルとOSSの練習で狩っていたモンスターが、一気に再出現したらしい。
「てゃあ!」
群を成す人狼型のモンスター。群の長を叩かなければ際限なく出現する、という特性をもったモンスターたちだったが、そんなことは構わずユウキは斬り込んでいく。おかげで群れ全体のヘイトが一気にユウキへと集まり、囲まれて袋叩きにあう――事もなく逆に返り討ちにしてみせていた。不完全燃焼の発散だろうか。
「ショウキ、襲われてたプレイヤーは大丈夫そう!」
「……そうくれば!」
後から来たリズがそれを確認してくれた後、俺はユウキの助けではなく一番大きい人狼の姿を探す。群れの主を倒さなければ終わらないというのならば、逆を言えば……群れの主を倒せば、この人狼の群れごと壊滅する。一番巨大な人狼を見定めると、それに向かって翼をはためかせる。
「せいっ!」
一瞬の交錯。空中から接近した
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