1部分:第一章
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もの女子校生に囲まれているのだ。
「誰か仰いましたか」
「いえ、私は」
「私もです」
周りにいる女の子達は少し戸惑いながら沙代子に言葉を返した。見れば今の声の色を出した娘は誰一人としていないのであった。
「どなたでもないのですか」
「はい、そうです」
「では誰が」
「あの」
誰の声でもないとわかりその白く細い首を捻ったところでまた声がした。
「また」
「誰ですの?」
「どなたが」
「ここです」
沙代子だけでなく周りの女の子達も周囲を見回しているとここでまた声が聞こえてきた。
「未月丘沙代子さんですよね」
「はい、そうですけれど」
今度は声が聞こえた方がはっきりとわかった。それでその声の方に顔を向けたのだった。その声がした方にいたのは。
「貴方は?」
「あの・・・・・・ですね」
そこにいたのは小柄な男の子だった。おずおずとした様子で戸惑った顔で上目遣いで沙代子を見ていた。髪は中央で分け丸眼鏡をかけている。顔立ちは中々整っているが格好いいとかそういうものではなかった。簡単に言うと可愛いといった感じの外見だった。その彼の言葉であった。
「僕、一文字直弥といいます」
「一文字さん?」
「八条中学の三年です」
中学生であるというのだ。それを聞けば外見もまだ幼くおずおずとした態度なのもわかった。高校生、しかも三年生を前にしてはこれも当然であった。
「訳あってここに来ました」
「この紅麗学園にですね」
「はい、そうなんです」
やはり上目遣いに沙代子を見つつ言う。ここで沙代子は彼に対して言うのであった。
「一つ貴方に申し上げたいことがあります」
「僕にですか?」
「そうです。まずは」
一呼吸置いてから述べてきた。
「背筋を伸ばしなさい」
「はい?」
「まずは姿勢です」
言葉の感じは穏やかであったがその調子はしっかりとしたものだった。
「殿方たるもの。常に姿勢よくです」
「あっ、姿勢ですか」
「堂々とされなさい」
毅然として告げる。見ればそれを言う沙代子の背筋はしっかりと伸びている。そのせいでただでさえ女の子の間では目立って長身の彼女がさらに高く見えていた。
「まずはそれからです。いいですね」
「あっ、はい」
「殿方はまず堂々とされることです」
姿勢を正してきた直也に対してまた告げる。
「そして」
「そして?」
「上目遣いではなく」
次に指摘してきたのはそこであった。
「毅然として見なさい。正面から」
「わかりました」
「全てはそれからです。さて」
この二つのことを伝えてからあらためて直弥を見た。見れば彼は小柄ではなかった。確かに大きくはないがそれでも沙代子とそれ程変わらない背丈であった。目の位置もまたそうだった。
「お話があるそうですね」
「
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