暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第3章 黄昏のノクターン  2022/12
31話 密航船の行方
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振り向きながら疑問を投げかけてくる。性格に違わず無邪気な内容で微笑ましいことこの上無いが、しかし、突き詰めて考察すれば如何に返答すべきか悩まされる質問である。一応、彼等に《心》というものがあると仮定して、答弁に臨むこととしよう。


「あれは、どうも胡散臭い。腹の底ではどう思われてるか分かったモンじゃないぞ」
「そうなの?」
「そもそも、ロービア全体に監視網を敷くことが出来ていたわけだ。それで情報が得られなかったというのは辻褄が合わないような気がする」


 そう言ってしまうとクエスト自体の存在意義に関わってしまうが、もしリアルでこのような遣り取りがあったとすれば、やはり完全に手の内を晒していないという印象は否めない。そもそもリアルでこの状況に置かれてしまえば、こんな疑念を抱く以前の問題なのだが。


「それでリン君、どうするの?このままクエストを進めるのかしら?」
「ああ、そうだな。むしろ今を逃すと面倒だ」
「………どういうこと?」
「確保できている在庫から納品分を慌てて引っ張り出したところを見ると、やはり差し迫った注文だったということだろう。それこそ、今日にでも動きがあって然るべきだと思うが」
「ああ、そう言われると………」


 納得したらしく、うんうんと頷くクーネを横目に見ながらゴンドラは商業エリアの一角に停泊させる。位置取りとしては、困り果てていたお姉さんが切り盛りする道具屋の裏手の水路だろうか。
 一応、他のプレイヤーに悪戯でもされると困るので、アルギロの絹で船を覆っておく。すると見事に周囲の景色に同化して、船の影など微塵も見えなくなる。船底があるべき位置の水面もキレイなフラットであるところを見ると、風景を《欺瞞》していることは言うまでもないが、そんなものは些事だ。非常に有用なアイテムであれば、それに越したことはない。

 とにかく、圏外へ赴くだけあってアイテムの補充を済ませるという意味合いで市場からティルネルのスキルで作成されるポーションの原料となる薬草を大量購入。多少値は張ったが、ポーションの性能からすれば適正価格と考えても遜色は無いと無理矢理に納得し、今度こそクーネ達の必要分も用立てて貰うことに。その間にヒヨリとリゼルが皮革系の軽装備を補修修繕、レイが武器の耐久度を補修し、準備が整って作業場に到着する頃には午後三時半を回っていた。


「まだあるみたいだねー! 遅刻しないで良かったよー!」


 山積みになった木箱をペタペタと触りながらレイがはしゃぐ。とりあえず話が簡単に進むならば機嫌は悪くならないらしい。俺は俺で水運ギルドにこの現場が見られた場合の対処法を考えていたのだが、どうにも用事がなければ立ち寄られない場所らしく、通りかかるゴンドラの姿さえ見当たらない。


「で、どうしよ
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