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弱点
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第二章

「何もないわよ」
「そう?だったらいいけれど」
「それだったらね」
 女の子達はその話を聞いてまずはこう述べた。そしてそのうえでだった。
 彼女に対してだ。こうも言うのだった。
「ねえ、いいかな」
「こっち来ない?」
「今お化けの話してるけれど」
「どう?」
「あっ、私は」
 またびくりとした様になっての返答だった。
「別に」
「いいの?」
「そうなの」
「急用を思い立ったから」
 女の子達は気付かなかったが実に奇妙な言葉だった。
「それじゃあね」
「そうなの。急用なの」
「じゃあ仕方ないわね」
「そうよね」
「御免なさいね。それじゃあ」
 こうしてだった。陽子はそそくさと自分の席から立ってだ。クラスから消えた。その表情も妙に強張っていた。その後姿を見てだ。
 女の子達はだ。こう話すのであった。
「何かいつもと違うね」
「そうよね。自分から話に入ってくるのに」
「それがないなんて」
「どういうことかしら」
「楽しい話なのにね」
 女の子の一人がまた言った。
「お化けの話ってね」
「そうそう。楽しいのに」
「何で入らないのかしら」
「急用なら仕方ないけれど」
 彼女達は気付いていなかったが妙に思っていた。そんなある日の教室だった。
 そうして文化祭になった。その文化祭で陽子はというと。
 軽音楽部で大活躍だった。ヴォーカルとしてだ。
「ううん、歌やっぱりね」
「上手いよね」
「ベースだっていいし」
「ライブ大成功よね」
「そうね」
 これが皆の感想であった。男女共にだ。彼女の歌と演奏は好評であった。
 そのことにだ。陽子自身も満足していた。ライブが終わった後の楽屋になっている体育館の一室でだ。バンド仲間に言われていた。ライブは体育館の中で行われたのだ。学校の文化祭ならではだ。
「よかったじゃない、陽子ちゃん」
「アンコールまであったしね」
「評価は上々ね」
「そうみたいね」
 黒い上着に黒と白のストライブのタイツとひらひらの黒スカート、それに緑のステッキにシルクハットの衣装の陽子もだ。にこにことしていた。
 そのうえでだ。パイプ椅子に座りながら話すのだった。
「前から練習したかいがあったわね」
「そうそう。よかったわね」
「一月前から準備していたしね」
「ライブは大成功」
「そう思っていいわね」
「それでだけれど」
 仲間の一人が言ってきた。
「これからどうする?」
「これから?」
「これからって?」
「だからライブは終わったのよ」
 その娘はにこにことしながら仲間達に話す。
「もう私達フリーなのよ」
「あっ、そうね」
「そういえばそうよね」
 言われてだ。陽子達もそのことに気付いた。思い出したと言ってもいい。

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