9部分:第九章
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「サイダーにしとくか、我慢して」
「コーラもええけれどな」
「それも結局勝ったらやし」
別の一人がここで話を元に戻した。
「ほな登坂」
「勝って来い」
あらためて守の背中に声をかける。
「勝てばパーティーやしな」
「根性見せるんやな」
「よっしゃ」
彼等の言葉を受けてグローブの拳を打ち合わせた。
「根性見せたるで」
こう言ったその時にゴングが鳴った。これが試合のはじまりだった。
試合は互角だった。守は確かに強いが原もかなりのものだった。フットワークを使う彼と互角の動きさえ見せる。守はまずそのことに驚いていた。
「俺と足は互角やぞ」
「わかっとるわ」
「有り得んな」
三ラウンドが終わった時だった。青コーナーの原を睨み据えつつ言う守に部員達が言う。見れば彼等も原を見据えている。そのうえでの話だった。
「御前と同じだけ動けるなんてな」
「俺もはじめて見たぞ」
「ブローも強いで」
守はそのことも言った。
「しかもや。鋭い」
「鋭いか」
「鋭さは向こうの方が上やな」
冷静に分析しての言葉だった。
「拳の鋭さはな」
「そんなに凄いんか」
「蜂や」
守は言った。
「蜂の一刺しや。そこまで鋭いで、あれは」
「おい、大丈夫か!?」
部員の一人が彼の今の言葉を受けて怪訝な顔を見せた。
「そんなんが相手で。勝てるんやろな」
「確かに足は互角で鋭さも向こうが上や」
またこの二つを話す。
「それでもや」
「それでも?」
「どないしたんや?」
「拳の強さは俺やな」
こうも言うのだった。
「俺の方が上や」
「そっちは御前か」
「それにや」
学校の勉強の時とは全く違う冷静な分析がさらに続く。
「俺はもう一つ勝っとるもんがある」
「もう一つか」
「ああ。それで勝てるで」
強い言葉で語るのだった。
「絶対にな」
「自信あるんやな」
「あるに決まってるやろ」
これが返事であった。
「なかったらな。とっくに負けてるわ」
「負けか」
「最後に勝つのは俺や」
こうまで言うのだった。
「何があってもな。勝ったるで」
「それも正々堂々とやな」
「絶対に負けへん」
このことを言いながらさらに。
「それに卑怯なこともせん」
「それもやな」
「俺は大阪の男や」
言葉に何かが宿っていた。
「浪速の根性、腐ったものやあらへんで」
「匂うけれどな」
部員の一人がここであえて茶化す。リラックスさせる為である。
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