8部分:第八章
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れ食うてあたったしな」
「アホやアホ」
徳川家康のことだ。彼が鯛の天麩羅、実際は鯛をごま油であげたものを食べてそれで死んだことを笑いものにしているのだ。大阪人の間で彼は今だに人気がない。それもその筈で大阪といえば豊臣だがその豊臣を滅ぼした憎き相手に他ならないからである。
「寿司もな。東京の寿司屋は威張っとる」
「何で食い物屋が威張るんやろな」
「アホやからやろ」
彼等の歳で自分達で寿司を食べに行く筈がない。だからこれも偏見でしかない。しかし偏見だからこそ思いきり言っていたのだ。
「ホンマ東京はな」
「あかんあかん」
「食いもんで惨敗しとるがな」
「こっちは人情の街大阪や」
大阪の人間がよく使うキャッチフレーズだ。
「あんな何もないスカみたいな街とはちゃうからな」
「絶対に負けへん」
「ちょっと聞くで」
ここでその試合をする守が皆に尋ねてきた。
「食いもんでは圧勝やな」
「ああ」
「それだけで勝ってるわ」
皆このことはすぐに返してきた。
「さっきから言うてるやないか」
「それがどないしたんや?」
「じゃあ聞くで」
何故かここで彼の顔は真剣そのものになっていた。
「お好み焼きともんじゃ」
「お好み焼きと?」
「どっちが上や」
こう皆に問うてきた。
「どっちがや。上や」
「どっちがか」
「そや。どっちが勝っとる?」
声も真剣そのものだった。その声で皆に問うのであった。
「それをはっきり聞きたいんやけれどな」
「アホ言うな」
「そんなのわかっとるわ」
「そや、最初からな」
これが皆の返答だった。
「わかっとるって?」
「お好み焼きの圧勝やろが」
「これが一番勝ってるわ」
皆また口々に言う。
「あんなもんじゃみたいなゲロみたいなもん食えるか」
「こっちのお好み焼き見てみい」
そのお好み焼き屋の息子に対しての言葉だ。
「ボリュームもあれば味もええ」
「しかも安くて何でも入れられる」
「モダンにも出来る」
話を少し膨らませてもいた。お好み焼きとモダン焼きはまた違うものだからだ。
「全然勝負にならへんがな」
「そら御前が一番わかっとることやろが」
「そやな」
あらためて皆の言葉に頷く守だった。
「そやったらな」
「行くんか」
「ああ、行ったる」
ここで大阪城に顔を向けた。そのうえでまた言う。
「太閤さんに誓うで。俺は絶対に勝つ」
「太閤神社お参りしたか?」
「あっ、それはまだや」
言われてこのことを思い出す。
「それはな」
「まだまだあかんのう」
「それを忘れたらあかんやろが」
皆呆れて彼に言う。
「まあな。それはな」
「試合終ってからやな」
「戦勝報告やな」
守も言った。
「これはな」
「そや。それで
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