第二十三話:約束と特訓
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事実徒手空拳に限定して言えば、何の能力もない常人であるオレですら、余裕を持って避ける事が出来たのだ。
何よりも―――幾ら作戦を用意したとはいえ、相手は己よりもはるか上位へ位置する格上。
起こり得るかもしれない予想外の事態へ対応するならば、固有能力以外も鍛えて置いて損はない。
……よしんばこの闘いを無事に切り抜けられたとしても、まだ何人もの【A.N.G】残ってやがるのだから。
「もう一度構えろ」
「……ん、構え―――」
「シッ!!」
「た……っ!?」
マリスが構えきる前に襲いかかり、放つのは頭部目掛けた左横蹴り。
行き成りで卑怯だと思う人がいるかもしれねぇが、いつ攻撃を開始してもいいといったのは寧ろマリスの方なのだ。
恐らくは出来る限りの範囲、実戦に近い形式で鍛錬を積みたいのだろう。
しかし己から言い出した事でも、不意打ちには流石に驚いたらしい―――が、それも束の間。
マリスは瞬時に屈んで攻撃を躱し、下段からの反撃を狙う。
……だが甘ぇ。
「っ……ラアッ!!」
俺は振り切らずに膝を曲げて、またも頭部狙いの前蹴りへとつなげた。
慌ててマリスは回避するもタイミングが合わず、勢いよく頬を掠めてバランスを崩す。
そのまま俺は左脚を戻し、引いた勢いを使って右脚での回し蹴りを撃ち出した。
空振っても止まらず今度は左ソバット、軽く跳び上がって更に右の脚刀。
思いつく限り、威力が乗る限り、体術での連撃をマリスへ打ち込んでいく。
「……やられない……!」
バク転を繰り返し俺から遠ざかって、マリスは距離を取り此方を見据えた。
次いで飛んでくるのは―――荒波の如く派手にうねる【鋼糸鏖陣】。
威力や切れ味自体は落としてあるものの、スピードは全く加減されておらず、その様は正しく得物を喰らわんとする大蛇だ。
右腕でソレを叩き落として、一度大きく、二度目からは小さくバックステップで距離を取れば……
「……隙有り」
二股に分かれて一方を地面に突き刺し、跳躍と髪の毛アンカーの二つで爆発的な加速を得たマリスが、青き銃弾と化して俺に躍り掛ってくる。
身体を縮めて傾けて、拳撃か蹴撃か、どちらがとんでくるかを分からなくさせている。
残り1メートルと言う所で突き出されてきたのは……左脚でのキックだった。
「ぐぅ……ッ!」
銃弾どころか砲弾ばりに想い一撃を如何にかこうにか受け流し、追撃しようと身構えた。
―――が、背筋に走った『予感』に従いダッキングする。
一瞬遅れて俺の頭上を、鞭のようなしなやかさを持った【鋼糸鏖陣】が通り過ぎる。
更に姿勢を起こして
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