第二十三話:約束と特訓
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スが近寄ってきた。
まあ、何で近寄って来たか、何が言いたいかは分かる。
「……麟斗。なんでこれ以上、食べては駄目なのか説明してほしい」
ほらな? 当たった。
嬉しくない。
微妙に眉を顰めつつも、俺はマリスの疑問に答えた。
「明日の為の準備と、少しながら対抗策を練る為だ。早いうちに行動して置いた方が、やれることが多くなる」
「……準備?」
「取りあえず、説明は『現場』に向かいながらだ」
そっちの方が手っとり早いしな。
何より理解力自体はあるマリスだ、簡単な《作戦》の説明でも理解はしてくれるだろう。
自分をそう納得させつつ小首を傾げるマリスから目を外し、間抜けに口を開けながらパンが焼けるのを待っている楓子を見て、何で此処まで緊張感がないのかと……俺は再びやるせない気持ちになった。
あと少し、スズメの涙ぐらいは緊張感を持ちやがれ、と。
―――全ての気合が抜け、気だるげになりそうなほど、ウンザリする出来事が重なった朝食時より、数時間後。
「シッ!」
「……あっ……!?」
時刻は午後四時丁度の頃。
例の場所での作業より帰ってきてから一先ず遅めの昼食をとり、食休みを挟んだ俺達は、今現在庭へ出てある特訓を行っていた。
「もっと腰落とせ。棒立ちが多い」
「……分かった」
特訓内容は、格闘術。
固有能力の威力、範囲、応用力など全てスペックに大幅な差がある以上、【鋼糸鏖陣】だけで対応しようなど愚の骨頂に他ならない。
現に駐車場では対応しきれず窮地に追い込まれていたしな……。
だからこそ【鋼糸鏖陣】や【漆黒爆弾】だけでなく、ド素人仕込みの付け焼刃だろうとも、体術を覚えておいた方が良いと俺は考えた。
相手が親父の様な規格外にも程がある羆だったり、それこそ手練れの剣士であったなら、体術特訓を行う意味など全くない。
アマチュア以下の人間の教えた体術など、すぐに突破されるだろう……それが自明の理だからだ。
「……この特訓は焼け石に水に近い……でも、合理的。だから有り難い」
「教えてる方としても有りがたいな。そう言ってもらえるなら」
だが相手がロザリンドとなると話は変わってくる。
設定と概念のお陰か、1つの動作に限るなら卓越した剣術を扱える彼女でも、それらを組み合わせて行使するとなればまた別。
各術技を無理矢理くっつけた無駄の多い連撃や、動作が大き過ぎただ速いだけの一撃となり果てた拳など、マリスなら苦もなく避けられる。
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