第二十三話:約束と特訓
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「幾らマリスでも、コレは分かっちゃくれないだろうが……」
初めて美味しい物を味わい、だからこそもっと食べていたい―――その想いから仕方なしに大食いとなってしまう事は昨夜聞いた。
そして、その中に団欒が好きだとは一単語も入って無いが、同時に省かれている訳でもなかった。寧ろ一人で乱雑に食うよりも、温かみを感じられる複数との食事の方があいつは好きなのかもしれない。
今俺が食っている物だって、それこそ “異常” の一言に尽きやがるんだ。
理解されるかどうかはそれこそ、試しにそのシチュエーションで食わせてみなけりゃわからない、って奴か?
……試す気など更々ないが。
「……麟斗」
「……!」
喰い終わってから数分後の、更の汚れを水で流して水切り台上に置いた直後、後ろからマリスの声がした。
振り向いてみれば、何時もながらの無表情で意識が覚醒しているのか、まだ寝ぼけ眼なのかは判別付かない。
されど視線は忙しなく、卓上に置かれた食パンと、俺の間で行ったり来たりしていた。
「マリス、オーブントースターは一応買ってある。そっちで焼け。合わせる数字は “3” だ」
本当はもう少し捻った方が、焼き加減にムラや残りが少なくなるが……黒コゲになると臭いが暫く滞留し最悪の場合染み付くので、また親父がうるさくなる事を予想し無難な数字を告げる。。
まあこうして教えた所で……また俺にやれなどと、阿呆な我儘言ってきたりするかもしれない。
当然断ってやろう―――
「……わかった」
―――と、思いきや普通にパンを取り出して、調味料置き場にあるパンに振りかけて焼くことで簡単にスイーツトーストが出来る粉(御袋が教えていた)を振りかけ、自分でトースターの中に入れツマミを捻った。
……普通に、ごく普通に驚いた。てっきり昨晩見たく、無駄な問答を繰り返すと思っていたが。
それで、手間が省けるなら良い事だがな。
設定した通り三分で焼け取りだされたきつね色のトーストからは、俺でもまだ芳しいと感じられたバニラの良い香りがふんわり鼻孔をくすぐってくる。
いただきますを言うのももどかしく、小さく口を開けて齧りついたマリスの無表情に、心なしか歓喜の色が宿った気がした。
これは多分、気の所為じゃあないだろう。
「……美味しくて、甘い……ソフトクリームとは違う。同じ、バニラなのに」
「そっちは砂糖主体だからだ。向こうはミルクが主だからな」
「……不思議……同じ、砂糖でもあるのに」
普段考えもせず、考える事でもない違いに、しかしマリスは食べながらも必死に頭を働かせ答えを出そうとしている。
昨日までなら放っておいただろう奇行も、今は少しだけ
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