第二十二話:フィルター越しの対話
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だと、若干睨みつけているかもしれない。
「……自分が狙われていると知って、動揺しない人間はいない。楓子は元気な子。でも夕方頃は様子がおかしかった」
「そうか」
「……興奮から冷め、【A.N.G】に狙われているという状況を理解し、動揺したからだと私は思う……麟斗も気が付いていた筈」
「……」
否定はできない。
何せ、そういった事は実際に考えていた。
僅かな時間語り合ったマリスでさえ見抜いているなら、長年過ごした俺などどれだけ違和感を感じたか。
「……だからさり気無く遊びに誘った。自分がゲームをする事で、自然に意識を誘導した」
「偶然だ」
「……一人にさせたくなかった、一人で寝かせたくなかった、だからゲームを持ち出した」
「偶々だ」
これは偽りなく本当だ。
久しぶりに煩いのが居ないからとゲームをしていたら、二人が後ろから見ている事に気が着いたので、キリも良いし作戦の確認もせねばならないしと、そう考えて動いたら勝手にそうなっていただけだからな。
今この居間に居るのも、作戦の基礎は出来いて後は確認作業をするのみだったから。
別に集中力も要らないなら、態々移動するなぞ面倒臭いことはしねえ。
「……私の知る麟斗は、麟斗自身が思っているよりずっと、周りに気遣っている」
「昨日今日来たお前に、俺の何が分かる?」
「……昨日今日来たからこそ、客観的に見る事が出来る」
「そう見えたなら、お前の眼は洞だ」
「……ならそれでいい。これ以上の問答は無意味」
そこで話は途切れ、再び作業に戻ろうとする……のだが、マリスは未だ離れてくれやしない。
「話は終わったろうが。なら離れろ」
「……まだ終わっていない。だから離れない」
これ以上何の話をする気だ……?
「……悔しい思いをしたくないのならば、誰かを守りたいのならば……《婚約者》として覚醒すべき」
「それも前に問答が済んだばかりだろうが。『異質な概念』とやらがある、だから可能性しかないと」
「……でも、裏を返せば可能性はあるという事になる。努力はして見るべき」
「筋トレでもしろと?」
「……麟斗にその気さえあれば、たった一晩でも《俺嫁力》は高められる」
「無理だな」
現れた直後といい、今での会話といい、そしてデパートでの一件の事といい……理解して納得し、呑み込む事が出来る考えはあれど、じゃ思いを一つに重ねられるかと言えば話は別だ。
ましてや相手は数年だけでも傍にいた中の良い人間ではなく、元々人外的な存在で昨日今日会ったばかりマリシエル。
竹馬の友でも確実に想いを合わせられる訳ではないのに、それが見ず知らずの死神ともなれば、より一層難易度は跳ね上がっちま
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