第二十二話:フィルター越しの対話
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えなくなるんだがな?」
「う゛っ……!?」
本当は勝つためにはそんな、物語を盛り上げる為に存在している美しさとかいらない、と言いたかった。
だが、また馬鹿な事言って反論するだけだし、分かりやすい例えの方がコイツの頭に入りやすいだろう。
「……ううっ……」
「マリス?」
マリスが不意に、死にそうなぐらい哀しげな声を出したので、俺は思わず覗き込んでしまう。
だが、その手元を見て声を出した原因を察し、途端に若干湧いた不安が一気に流れ出でた。
何せ……心配する必要などないからだ。
「……丼が無くなった」
「テメェで作れ。何度言や分かる」
ほらな。
少しでも心配しかけた俺が馬鹿だった。
……というか、何が何でも俺にもう一回作らせなければ気が済まねえのか、お前は。
つぅか中々話が進みやしねえ……真面目に考えようとしているのは俺だけか?
「楓子、俺が今から言う事を一言一句ボケずに書き移せ」
「えー……だって―――」
部―垂れるのは予想の範疇内だ。
だから俺はすぐに、不平を言いかけたデコ助の前髪に手をやる。
「……黙れ、根こそぎ行くぞ?」
「お兄様! ご命令をお願いいたします」
真剣にペンを取って描く気になってくれた事に、俺は安堵してた溜息を吐き、
『殺戮の天使は“アクチュアル”と唱える事で、紅薔薇の剣姫よりも強力な剣を、己の手の内に具現化出来る』
と、シンプルにそう書かせた。
「……“アクチュアル”」
更にマリスに唱えさせ、両の手を見つめる。
―――が、何も起こらない。
「って事は、あたしが皆の設定に後から付け加えても、何も起きないのかな?」
「……考えられる理由としては、具現化した事で既に設定が固定されている事と、《異なる概念》が混ざっている事が挙げられる」
「そうなると、デコ助の奴を狙うのはお門違いだろうが……相手はこれを知らないからな」
「……これからも狙ってくると、予想できる」
だからといって狙いは的外れなのだと示す為に、全員の前で実証して見せるなんて滑稽な真似が出来る筈もない。
それにもしかすると俺達が思いつく以外の方法が存在し、それを利用して悪様出来てしまう可能性もあるのだ。
なら尚更、どちらだろうと渡す訳にはいかねえか。
……やっぱり如何傾こうと、結果的にアイツを守らねばならない結果なのが、何故だか非常に釈然としない。
全ての元凶は、他ならぬデコ助の奴だってのに。
「兄ちゃん……コレから私の事、精いっぱい守ってよね」
「断る」
「それでも実の兄!?」
猫なで声ですり寄って来た楓子に、当然の否定を返す。
自分で
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