第二十二話:フィルター越しの対話
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う。
何より俺自身が重ねる事など“出来ない”と思っているのだから、可能性があっても実行自体は不可能だろうに……。
「……無理じゃない、出来る」
「!」
離れるどころかより密着してきたマリスに、俺は思わず目を見開いてしまった。
いやくっ付くだけじゃあ無い……腕を回して抱きしめてきたのだ。
脈絡もなく、ぬいぐるみの様に質感が良い訳でもないので理解も出来ない……そんな行動を取られれば、誰だって目が皿になる。
更に今のマリスの服装は下着の上に薄手のシャツを一枚着ただけ。
寝間着とはいえ俺は半ズボンと、上半身はTシャツそれ一枚。
……彼女の身体の柔らかさと感触が、直に俺の肌から伝わってきて、冷静さを幾らか乱されてしまう。
「……だから、セ○クスしよう麟斗」
「断る」
今ので一気に頭の血が冷えた、どうも有難う。
しかも “だから” ってなんだ “だから” って。
無理じゃない、出来るから文脈が繋がってねえだろうが。コミュニケーションもあったもんじゃあ無い。
「……肌を重ねれば、心も重なり想いを一つに出来る……そう聞いた」
「楓子にか」
「……ずっと前に見たドラマで」
「フィクションと行動させんな……」
俺はそれ以上何もいわず、回されているマリスの腕を外すと、頭を押して遠ざける。
……限界だ……いい加減頭にきてんだ。
「これ以上戯言ほざくなら、キレるぞ」
「……麟斗は私の事が嫌い?」
「嫌いだな。出会って行き成り、んな事言い出す奴なんか」
ゲームならばおいしい展開だとか、デコ助の奴ならば大歓迎だと喜ぶだろうが……俺はそうは思えない。
寧ろ不気味でしかない。
想像してみればいい……出会って初っ端の美少女が、行き成りひっついて来て家まで上がってきて、服を脱ぎ始めたら……と。
コイツは何を考えているのか、何故自分に肌を見せられるのか、どんな思惑を濁らせているのか、俺にはおぞましくて仕方がない。
今回に限っては理由こそハッキリしているが、だからといって行き成り極論へ飛ぶ理由が分からない。
今必要なのは《俺嫁力》を引き出す事であり、間違っても素肌を重ねる事じゃあない。
俺が頑なに理解を示さない事に焦れたのだとしても、本当に俺の事を分かっているのならそんな発言自体飛び出さない筈だ。
大方、楓子や御袋から聞かされたデマを信じ込み、愚直に実行しているのだろう。
馬鹿な考えを押し付けられ、事実だと信じ込まれた心外感。
そこから来る怒りも、引き剥がした理由の一つだ。
何より……好きでもない奴となど、少なくとも俺ならまずやりたくない。
「……ごめんなさい」
未だ近付こう
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