暁 〜小説投稿サイト〜
殺戮を欲する少年の悲痛を謳う。
7話 天使のような死神(グリムリーパー)
[2/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
あ。僕もだ。きっと、いい友達になれただろうね」
 上っ面だけで僕らは会話を進める。それもお互いにわかっていた。
 「さて、そっちの壁に居る2人の女で、幼いほうが以前ワシントンを狙撃したんだろう?」
 やはり視えていたか。
 「さあ。僕は命令してないからね。勝手に僕の味方がやったのだろう」
 「お前に恋情を抱いているほうは随分肝が据わっているな?」
 「さあ。僕は彼女の内面を知らないからね」
 クロノスは僕に探りを入れる。少しでも心が揺れ動いたり、少しでもクロノスの単語に耳を傾けたら、僕の体は穴だらけだ。だから適当に受け流し、身構えを止めずに答える。長い。1秒が実に長く感じる。
 「メリラ」
 「何ですか?」
 クロノスは今度はメリラに質問をする。
 「お前はどっちの味方だ?」
 返答によってはメリラは殺される。いや、返答ではなく、この際声色と言うべきだろう。
 「今の状態では、私はカリヒさんの味方です」
 「なるほど」
 クロノスは暫く黙った。今彼を撃ったら多分殺せる。でも何故か“もう1人”の右手が拒む。
 「クロノス隊長。聞いて下さい。カリヒさんは正義のために戦っているんです。今の世界はおかしいと主張しているんです!やり方は正しいとは言えません。ですが、奴隷制度はやはり間違っています!」
 「正義ってなんだよ」
 僕はつい、口に出してしまった。
 「この世界に正義なんてものが存在するか?」
 口が止まらない。何故か出てくる。“もう1人”のせいか?
 「残念ながら存在するんだよ」
 クロノスは口を開く。
 「黙れ!正義が存在するならどうして僕はここにいる!?どうして僕は人を殺す!?どうして君は人を殺す!?それは悪だけがこの世界に漂っているからだ!」
 何故か、この言葉が落ち着いた。自分で叫んで、自分で本能のままに言葉を発しただけで気分が良くなった。
 「うるさい!」
 クロノスも続けて怒鳴る。
 「俺のやってきたことはいつも正義だ!じゃないとなんのために人を殺したんだ!?俺は頼まれて、俺は誰かに必要とされて!だから殺している。カリヒ!お前はどうなんだ?」
 彼の精神を支配できた。この言葉による白兵戦は僕の勝ちだ。後はモチベーションを保った状態でクロノスの眉間を撃ちぬく。
 「君がもしも正義であるのであれば、僕は悪だ。君は必要とされて死を与えているのであれば僕は真逆だ。快楽のために人を殺している」
 一瞬、クロノスの頬が引きつったように見えた。今のところ、互いに一歩も譲っていない。僕は腹に巻いた爆弾を外し、クロノスに投げつけた。
 彼は窓から飛び降りる。爆発で窓がはじけ飛び、そこにしかけた爆弾が誘爆する。僕はすぐにメリラの手錠を外し、彼女の右手を引く。
 「上出来だ」
 1階に降りると、リーナは
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ