5部分:第五章
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も増して熱心なんやな」
「そういうことや。けれどな」
ここで彼は言うのだった。
「お好み焼きはやるからな」
「それはかいな」
「そや。安心せい」
顔だけでなく手の甲にも汗が流れている。身体全体から湯気さえ立っている。
「それは忘れんからな」
「ほなまあ頼むで」
「精々殴り殺されんようにな」
「まだ言うか、御前は」
沙耶の今度の言葉にもまた言う。
「俺は相手を殺したりはせえへん」
「兄ちゃんが殺されるって言うたんやけどな」
「俺はスポーツマンやぞ」
言葉の胸が張っていた。
「そんなことするかい。いつも正々堂々や」
「卑怯なことはせえへんってことかいな」
「そうや」
このことは断言していた。
「絶対にな。それはあらへん」
「まあ昔からそうやったしな」
譲は兄のその言葉を聞いて頷いた。
「兄ちゃんせこいこととか汚いことはせえへんからな」
「勝つか負けるかや」
実に単純明快な二者択一だった。
「どっちかしかないんや」
「で、勝つんやな」
「そや、絶対に勝つ」
また断言する。
「何があってもな。今回も勝ったるで」
「そうかいな」
「まあ精々死なんようにな」
「まだ言うんかい」
最後まで口が減らない沙耶にかなり腹が立った。だが今はトレーニングを優先させたのだった。そしてその全国大会。彼は順調に勝ち進んでいた。まるで去年のうっぷんを晴らすかのように。勝って勝って勝ち続けていた。
「おいおい、絶好調やな」
「凄い勢いやないか」
「当然や」
守は部員達の言葉に応える。先程の試合も勝ったのである。彼等は今試合会場の外の自動販売機のコーナーでドリンクを飲んでいた。守が飲んでいるのはポカリスエットだった。
「どいつもこいつも強い」
「強いか」
「伊達に全国大会に出てるわけやないわ」
このことは認める。
「しかしや」
「しかし?」
「何や?」
「俺はもっと強いんや」
ポカリスエットを飲んで自信に満ちた顔で述べたのだった。
「だから勝てるんや」
「御前が強いからや」
「そや」
また断言してみせる。
「俺はな。これまで人の倍トレーニングを積んできた」
「まあそれはな」
「ようやってたわ」
これはもう皆が知っていることだった。
「御前ボクシングは真面目やからな」
「あとお好み焼きのことは」
「どちらも俺には離せへんものや」
立ってポカリスエットを飲みながら語る。
「どちらもな。だから」
「真面目にやるんかい」
「どっちも死ぬ気でやっとる」
また言うのであった。
「死ぬ気でな」
「よっしや、死ぬ気か」
一人が彼のその言葉を受けて言った。
「そこまで思うておるんやな」
「あかんか?」
「いや、ええ」
彼はそれはよしとした
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