2部分:第二章
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第二章
「なあお兄ちゃん」
「何や沙耶」
「鉄板端まで拭いてるか?」
「当たり前やろが」
こう妹に返した。
「四角いもんは四角く掃除する」
「そやで」
「わかっとる。安心せんかい」
「そやったらええけど」
「俺は四角いのには五月蝿いんや」
そしてこうも言うのだった。
「何せボクシング部の期待の星やからな」
「そうか?」
彼より四歳程歳の下そうな男の子が床掃除をしながら応えた。
「兄ちゃんアホやて俺いつも先輩から言われるで」
「何処のどいつや、それは」
「中学の三年の先輩」
「ボクシング部の奴等か?」
「いや、皆や」
「全員かい」
言われて思わず声をあげる守だった。
「譲、三年の奴等全員か」
「皆言うてるで。先輩等が一年の時三年の登坂先輩いうたら有名なアホやったって」
「俺の何処がアホじゃ」
自分ではそれを全力で否定したい守だった。
「俺は麒麟児やねんぞ、麒麟児」
「少なくとも頭は麒麟児ちゃうやろ?」
金の勘定をしている母親が彼に言ってきた。
「高校かてボクシング部の特待生やろが。しかも今も留年スレスレの」
「学校の勉強なんかいるか」
今度は居直りだった。
「俺にとっちゃあれや」
「あれ!?」
「あれって何や?」
「お好み焼きとボクシング」
家業まで入れていた。
「その二つが完璧やったらそれで充分や。勉強なんかいらへんのや」
「そう言うても高校生で九九言えんのはどうなんや」
テーブルを拭いている父が言ってきた。
「自分の名前漢字で書けるんかい」
「それ位できるわ」
「他の漢字はどうなんや?」
「自分の名前書けたらそれで充分やろが」
こんな有様だった。
「漢字なんてな」
「やっぱり兄ちゃんアホや」
「ホンマアホや」
弟や妹達がここぞとばかりに言う。
「だから俺等兄ちゃんみたいにならへんようにって」
「勉強して正解やったわ」
「学校の成績がナンボのもんや」
そう言われても全く気にしていない守だった。
「大事なんは学校の頭やない。まずは体力」
「次は何や?」
「それから度胸」
「そんで次は?」
「動きや」
ボクサーらしい言葉だった。
「四番目が負けん気でな」
「で、最後は?」
「最後の最後で頭や」
やっとここで出て来た。
「けれど勉強はいらんやろ」
「確かにな。勉強がでけんでも生きてはいける」
父親もそれは認める。
「そやけれどな
「何や?」
「御前最低限の知識位は持っとかんかい」
彼が言うのはこのことだった。
「親父が馬でお袋が鹿って何回言われとる?」
「気にしとらんからわからんわ」
本当に学校の勉強は気にしていないのだった。
「そんなんな。まあこれで俺の分は終ったで」
「ああ」
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