十三話:幸せとは
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な感覚が広がった。まるで故障したかのように固まる。
そして、ようやく頭が現状を理解する。自身は今抱きしめられているのだと。
リインフォースからの暖かな抱擁を全身で受け止めているのだと。
「な、何をしているんだい? リインフォース」
「私が居る。お前の傍にいてやる」
「――ッ」
声にならない程に小さく、短い悲鳴が切嗣の口から零れる。
何も彼女が嫌いなわけではない。寧ろ親愛の念を抱いていると言っていいだろう。
だからこそ、彼は悲鳴を上げる。自身のせいでまたも誰かが不幸になってしまう可能性に。
どうしようもない自分の為に幸せを投げ捨てようとする彼女の行為に。
何よりも恐怖する。
「何を言っているんだ、リインフォース! 君ははやての元に帰るんだろう。もうこちらの目的は達成されたんだ。僕に気を使う必要なんてない。そうだ、今すぐにでもはやての元に連れて行こう」
まるで怒鳴りつけるように言い返す切嗣の姿にもリインフォースは一切動じない。
それどころか楽しそうな表情で見つめ返すばかりである。
困惑する切嗣の耳元に彼女は淡い桃色の唇を近づけてハッキリと告げる。
「嫌だ」
その言葉に呆気にとられ間抜けな表情になる彼を見て、彼女は少女のように笑う。
まるで悪戯に成功したかのような無邪気な笑顔に毒気を抜かれながらなんとか彼は声を絞り出す。
「……契約だとはやての元に帰るはずだっただろう」
「いいや。契約は身の安全の保障、目的の達成後の自由、そして人間としての幸せを教えることだ。つまり私がどこに居ようとも自由だということだ」
本当に今まで言ったことは全て覚えているのかスラスラと読み上げる彼女に彼は頭を抱える。
確かに彼女がどこに居ようとも自身に止める権利はない。
しかし、自身の傍となれば人間としての幸せを得られるはずがない。
何としてでも踏み止まらせようと考え、ため息と共に口を開く。
「それだと三つ目の人間としての幸せが満たせないだろう。やっぱり君ははやての元に帰るべきだ」
「確かに主と騎士達と共に過ごすのは幸せだろう。しかし、それ以上に私が幸せを感じることがあるのならばそちらが優先されるのではないか?」
「お、おい、リインフォース?」
立ち上がり、肩を掴むようにして顔を近づけてくる彼女に切嗣は慌てふためくしかなかった。
ルビーのような美しい瞳が彼を捉えて放さない。
まるで、宇宙にでも吸い込まれるような感覚を感じ切嗣は動くに動けない。
「様々な形の幸せを見続けた結果、私は辿り着いた。私の幸福は―――お前の傍に居ることだ」
二年余りの時を共に過ごした果てに彼女が得た答え。
それは衛宮切嗣の頭を真っ白にしてなおも痛めつける程に威
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