十三話:幸せとは
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
な行為が正しい歪んだ世界。
切嗣は苦悩のあまりにそんな世界への恨み言を零してしまう。
この世界を創った神が存在するのだとしたら血飛沫や絶望が好みの悪辣な存在に違いない。
だからこそ思う。もしも―――
「僕が神様だったら―――こんな世界は創らなかった…ッ」
誰もが笑いあえる世界を創った。誰も傷つかない優しい世界を創った。
仮にその世界が誰にも望まれない世界だというのならこの身は悪魔でいい。
例え、悪魔だとしても自分はこんな血と絶望に満ちた世界など創りはしなかった。
「……切嗣」
リインフォースは今にも泣きだしてしまいそうな切嗣の隣に座りそっと寄りかかる。
突然のことに切嗣は驚いて目を見開き、リインフォースを見つめる。
そんな切嗣に対して彼女は優しく微笑みを返す。
「泣いてもいいのだぞ」
「……そんな権利があるわけがないだろう」
彼女の優しい言葉にも切嗣は何かを堪えるような表情をして首を振るだけである。
数え切れぬほどの悲しみを生み出してきた自身が泣いていいはずがないと彼は思っていた。
それが分かったためか彼女も少しだけ悲しそうに目を伏せる。
しかし、それだけだ。決して離れはしないとでも言う様に彼の肩に頭をのせる。
そのことに困惑する切嗣をよそにリインフォースは語り始める。
「世界は確かに冷たく、残酷だ。私もよく知っている」
「リ、リインフォース……」
「だが、それだけでもない。愛も奇跡も存在する。かつてのお前はそれらをどこまでも否定していたが、本当は全ての人がそういったものを受け取れる世界が欲しかったのだろう?」
記憶が摩耗してしまう程に絶望の時を過ごしてきた彼女の言葉に切嗣は何も返せない。
あれだけ否定し続けた。でも、原初の理想は否定したものが満ち溢れている世界だった。
求めているのに否定していた。それがどんなに滑稽なことか、今になって理解する。
矛盾した願いが叶えられるはずもない。最初から衛宮切嗣の理想は崩れ去る定めだったのだ。
「愚かすぎて理解できないよ……。どうして僕は矛盾に気づけなかったんだろうか」
「自身の姿を見るためには鏡が必要だ。そして、人にとっての鏡とは他者に他ならない」
「ああ……そうか。どうりで分からないはずだ。ずっと……一人だったからね」
誰からも理解されないと心を閉ざして走り続けた。
その間は心に迷いなど生じることなく走り続けられた。
だが、誰とも理解し合えなかったためにその道が間違っているという指摘すらなかった。
勝手に暴走して、勝手に道に迷って絶望しただけ、笑えるほどに自業自得だ。
「そうだな。だが、今はもう―――一人ではない」
切嗣の体に温かく柔らか
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ