巻ノ二十六 江戸その九
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「拙者は家臣としてお仕えするからな」
「ですか、殿もですか」
「真田家の家臣としてですか」
「お仕えされますか」
「これからは」
「そうする、それでじゃが」
さらに話した幸村だった。
「父上がどうされるかじゃ」
「どの家にお仕えするか」
「そのこともですな」
「大事ですな」
「おそらく羽柴家に仕えることになる」
真田家はというのだ。
「織田家にお仕えするときめたが」
「その織田家がああなり」
「それで、ですな」
「次に天下を握る羽柴家にお仕えする」
「そうされますか」
「それならば羽柴家に忠義を尽くす」
必ず、というのだ。
「ならばな」
「はい、それでは」
「我等はですな」
「羽柴家にもお仕えしますか」
「そうされますか」
「そうするのが忠義じゃ」
こう言うのだった。
「やはりな」
「ですか、羽柴殿にですか」
「我等はお仕えする」
「そうなりますか」
「そうじゃ、しかしな」
ここでまた言った幸村だった。
「我等はそうなるであろうがどうやらな」
「どうやら?」
「どうやらといいますと」
「父上はご自身と拙者は羽柴家にお仕えする様にしてじゃ」
そしてというのだ。
「兄上についてはな」
「あの方はですか」
「真田家を継がれる」
「その方については」
「どうされるであろうな」
それがわからないというのだ。
「そこがわからぬ」
「左様ですか」
「そのことはですか」
「殿もですか」
「おわかりになられませぬか」
「それはこれから次第か。まして羽柴家は確かに天下人になれるが」
しかしというのだ。
「筑前殿はともかくじゃ」
「その後ですか」
「筑前殿の後が問題ですか」
「それからですか」
「どうしてもあの家は百姓あがりであることがついて回る」
あえてだ、幸村は羽柴家のこのことを話した。
「何かとな」
「そういえば譜代の家臣もですな」
「おられませぬな」
「弟君はおられますが」
「ご一門の方も少ないですな」
「そうじゃ」
こう言うのだった。
「筑前殿の後が問題じゃ」
「殿がいつも仰ってますが」
「そこが羽柴家の泣きどころですな」
「譜代の家臣がおらず」
「ご一門の方も少ない」
「ご子息もおられぬ」
跡を継ぐ者もというのだ。
「これが一番困ったところか」
「ですな、跡継ぎの方がおられぬと」
「それだけで大きな弱みですな」
「羽柴殿も結構なお歳ですが」
「不惑を超えておられます」
「そのお歳でお子がおられぬことはな」
それ自体がとだ、幸村は言うのだった。
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