第九章 長い長い一日
第六話 長い一日4
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夢に時の流れはない。
あるとすれば周りの流れを鑑賞するぐらいで。
だからこの桜は枯れない。枯れることを知らない。
長いこと繰り返した時で一度として枯れたことはない。
「相変わらず、いい桜にいい女だな」
私は振り返った。
暗闇に咲く桜の下で、待ち望んだ待ち人に出会う。
彼は桜を見上げ、美しいとは言わない。
私にはここまで美しい桜はないと思う。
「この夢も終わるのか」
この台詞は疑問形というより確認に近い。
夢は役割を終え、閉じる。
それは私の終わりに繋がる。
夢の世界は閉じる。
「教えてくれ。あいつらが払った対価を・・・」
私はうなずいた。
別に話してもよいだろう。
役割を終え消える私が、終わりまで黙っていても意味はない。
「初めて時を巻き戻した時、過ちに気づいた菊地原が二度と繰り返さないために対価を払ったわ。
でも彼一人分では足りなかったの。
彼は全く変わらない過去に巻き戻したから。
同じことは繰り返す。運命を変えるには相当な代償がいるのよ。」
「無償なら安いがな」
「だから彼は繰り返し続けた。
そういう対価を払ったの。
必ず時を巻き戻したいと願うという対価を。」
「それ、一生、繰り返し続けるだろ、普通」
「対価を払い終えれば、二つが衝突して菊地原の願いが負ける。
それまで私は待ち続ける対価を払った。
菊地原くん以外にも払った人はいるわ。
負担を軽くしようと。
風間さんは記憶を。繰り返した記憶を所持し続ける。
繰り返した一から今に至るまでの回数すべて」
「風間は知っていたのか!?」
「・・・ううん。それを思い出すのは、時を繰り返す願いを菊地原がする直前よ。
知りながら忘れていた後悔が対価。
同じものを払ったのはあの子も同じ。
彼女ははじめてから全て知りながら、変えることの許されないという対価。
歌川くんも払ったわ。私に・・・
時を繰り返す初めの私に・・・夢をくれて桜をおいてくれた。
だからこの桜は一番綺麗。
何に変えても」
「・・・そして俺は姿を見せず今の可憐の夢にでて、演じる役目。
俺たちはIFだから。これから先の菊地原たちにはIFだから。」
私はうなずいた。
悲しげな笑みは浮かべない。浮かべたくない。
「何度も繰り返して対価を払って・・・
やっと払い終えた。
だから菊地原の願いはかなう。
私の最後の役目・・・菊地原が願う途中に止めること。彼には声が届いたかな。
あ、そういえば、あなた・・・
この夢に菊地原くんが来たとき、乱入したでしょ?
ダメよ、あれ。」
「あぁ、すまない。結局、お前に言えなかったな。
お前は・・・」
「しーっ。それは『私』ではなく今の『私』に言わ
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