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2部分:第二章
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起こるか全くわからないんだ」
「甲子園だけはですか?」
「そうだ。阪神の試合を見ろ」
 そうしてその甲子園を本拠地とする阪神について言うのだった。
「あのチームの試合なんて本当にどうなるかわからないだろ」
「そうですね」
 達明もそれに頷いた。これもまた伝統的なものであろうが阪神の試合というのも実に筋書きがないドラマになっている。この球団の試合というのは最後の最後までどうなるか全くわからない。優勝が確実な状況で果たせなかったこともある。そうかと思えばいきなり優勝したりもする。鮮やかな勝利もあれば惨めな敗北もある。何時どうなるかわからない、阪神タイガースというチームは甲子園のドラマの中にある存在なのだ。
「それも甲子園にあるからだ」
「だからですか」
「何があっても後悔するな」
 そう言ったうえでの言葉であった。
「いいな」
「わかりました」
 達明は答えた。だが答えはしたが実はそうなるとは思っていなかった。
「何があってもですね」
「実際な、気の抜けた野球だけはしなかったらいいんだ」
 先生はまた言った。これは先生の本音だった。
「それだけはですか」
「そうだ、ここまで来れたんだ」
 語る目が優しくなった。甲子園に来れたということだけでかなり満足しているのがわかる。
「だからな」
「先生、けれど」
 しかし達明は言う。
「優勝しましょう、絶対に」
「それはな。当然俺もそのつもりだ」
 それと共にこうした気持ちも持っていた。満足していると共にさらに上を目指すというのだ。
「やるぞ」
「はい」
 達明はまた頷いた。見ればもう全身汗まみれだ。汗と砂で汚れた実にいいユニフォームになっていた。

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