1部分:第一章
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張っていけ」
「胸をですか」
「そう、そしてここまで来たらな」
先生は大きく出た。達明達を鼓舞するかのように。
「優勝するぞ」
「えっ、優勝って」
「まさか」
皆この言葉には驚くしかなかった。甲子園に出られただけでも大変なことなのにこれで優勝とは。もう何と言っていいかわからなかった。
「そのつもりでいくんだ」
先生はこう言葉を足してきた。
「そうじゃないと勝てはしないぞ。それとも何か?」
不敵な笑みを作ってまた達明達に問うてきた。
「負けたいのか?違うだろ」
「それはまあ」
「やっぱり」
「そうだろ?どうせ出るんならな」
先生はまた言った。
「勝って勝って優勝だ、いいな」
「わかりました」
「それじゃあ」
「いいな、久保田」
そうしてまた達明に声をかけてきた。
「御前は一年だけれどな」
達明は一年ながらその敏捷性と技を買われてレギュラーになったのだ。小柄だが頭の回転も速くセカンドを任されている。打撃も守備も抜群の巧さがあるがそれは彼の毎日の練習によるものだ。彼は練習の虫、野球の虫だったのだ。だから他の部員達からも評判はいい。
「頑張れよ」
「はい」
達明は先生の言葉にこくりと頷いた。そうして新幹線に乗り甲子園に向かうのだった。
宿に入ると夕食はステーキにカツだった。これは定番だった。
「敵に勝つ、ですね」
「そうだ」
部員達と同席している先生が答えてきた。
「それに力もつくからな。どんどん食え」
「わかりました。それじゃあ」
「頂きます」
ステーキにカツを食べる。それが終わると達明は宿の庭に出て素振りをはじめた。これは彼の日課である。
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