第九章 長い長い一日
第五話 長い一日3
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赤、赤・・・時々青。
生ぬるい血と、ぼくの腕。
斬られた右腕からトリオンが漏れる。
感覚器官をOFFにしているから気づかない。
耳がいつもよりうまく聞こえる。
見えない武器は8本。
スコーピオンでは防ぎきれない上に、単品シールドでは意味がない。
フルでも怪しいが。
あのときは必死だったからどうやって槍を弾き飛ばしたのか、覚えていなかった。
「あぁ〜ナイトになりきれないナイト様か。
物語の人物なりにシナリオ通りに動きなよ?
作者に与えられたままに。楽でいいかも」
「確かに楽でいい。
シナリオ通りに動かなきゃならない。確かにそうだよ。
でもユウは言った。
世界が歪んだから人としての自由がぼくらにはあるって。
だから君らには感謝してるよ。
だから・・・」
その先を言えなくしたのはぼくと相手の女ではない第三者。
ぼくの耳はとらえていた。
第三者の止まった心音を。
戦場だと忘れて可憐に向かって走る。
残された左腕で抱えるが、熱は伝わってこない。
ぼくは何を言っているか自分ですらわからないほど叫んでいた。
敵は餌食であるぼくになにもしてこない。
よく漫画にある展開だ。
そんなとき、良からぬことをぼくは考えた。
何も変わらなくていい。
ただ繰り返すだけで構わない。
また会えるなら世界を歪ませてでも、会えるなら・・・
もう一度時を繰り返せばいい・・・
「まだ伝えたいこと・・・言ってないから」
願いは神に祈れば叶うのだろうか。
ぼくは・・・
『ダメよ、望まないで』
ぼくは我にかえって辺りを見まわした。
誰かが走ってきている。風間さんか、歌川か。
「菊地原、可憐を連れて逃げろ!!」
「近界民の仕業か!!」
ユウと三輪だった。彼らは支援担当ではなかったのか。
というか米屋や奈良坂、古寺は・・・
ぼくは考えるより体を動かした。
左腕で可憐を抱え、出口を真っ直ぐ狙った。
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