第九章 長い長い一日
第四話 長い一日2
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気づけば菊地原も歌川も後ろにいなかった。
普段なら気づけるものが気づけないほど、何かに集中していたらしい。
俺はカメレオンを起動したまま、敵国の研究室らしき部屋のロックを解除した。
扉のナンバーは逃げている市民が口にしていたのを聞いた。
罠だろうが、入らないことにはわからない。
研究室内部はトリガーの研究より機械の研究ばかりだった。
今の日本で人型アンドロイドをつくろうとしたら、技術的に手足しかできない。
小さなAIアンドロイドなら別だが。
確かに、敵国からトリガー使いを誘拐する必要はありそうだ。
しかし、わざわざ都合のいい人を生み出したい訳は理解できない。
「侵入者か。」
俺は慌てて振り返った。
40代くらいの男が弓を片手にこちらを見ていた。
カメレオンは起動しているが、相手には見えているらしい。
俺はカメレオンを解除した。
トリオンの消費が無駄になるだけだ。
「風間・・・まぁ今回は無駄でも構わん。
今回は違う動きがありすぎるからな。
また繰り返すだけだ」
「貴様が例の魔法使いとやらか?」
「なるほど。時を繰り返す根元が知りたいとみえる。
YESと言いたいが、NOだ。」
「そうか、なら用はない。」
俺は逃げるつもりでスコーピオンを手にした。
隙間をかいくぐり、無傷で逃げ切れる確率は10%程度でも。
菊地原と歌川が如月と合流していれば良いが。
「くだらないな。敵ばかりに根元があると考えるのが」
「・・・」
俺は考えもしなかった。
時を繰り返すことができるのは魔法使いだけではないとしたら。
如月がまじないの類いは存在すると言った。
人はまじないをはじめから使えるものであると。
〜〜〜〜
見えない武器は生身の私を襲う。
勝ち目ははじめからない。
生身の時点で私の死は確定している。
やれることは限られている。
私は覚悟を決めて、相手に向かって走り出した。
見えない武器が私の体を貫いた。
体から伝わる感触から、腹を貫いた武器は槍の形状らしい。
血に染まる武器を眺め、私は最後の覚悟をした。
自ら武器に体を刺す。血がつけば武器はみえるようになる。
女はそれに気づいたのか、恐怖の顔をした。
死をかけた人の行動は、相手を怯えさせる。
今の私がそれだ。
女は嫌になったのか、武器を私から抜いた。
立つことも出来ない私は倒れた。
まだ色のない武器がたくさんある。
血がついたのは二本だけだ。
こうすれば、見えない武器に気づいてくれる。
菊地原は必ずわかってくれる、と信じる。
「勇気は讃えるけど、今回は失敗だから別にいいや。
じゃあねえ〜」
どうやら女は悪趣味らしい。
血のついた槍で私にとどめをさしたいみたい。
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