Lost Memories
プロローグ
5 天ノ峰歴史書より
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道中、ツタや木を越えながら、あの言葉をふと思い返してみる。
『あなたは、知っているはずよ』
色々とぐるぐる考えてみるが、私の知っている現在の人には該当する人間は居ない。
ならば、この森の歴史に、何か関係があるとしたら?
一つだけ、ピンとくるものがあった。
「――……あれかな」
この森の神について、あたしは確かに読んだことがあった。
今からおよそ千年前。この森の直ぐ近くに位置する天ノ山あまのさんが歴史的な大噴火を起こした。その規模による被害は、この町はおろか、日本パング全体に広がったと言われているほどだ。
そのような噴火であるから、当然溶岩が大地に流れ込み、そして固まる。そこから緑は、生き生きと生えてくることはない。少なくとも、数百年は。
そう思われていた。
それから数年後。一部には愛郷心からか、戻ってくる者も居たらしいが、自然無き村は寂れてしまい、村人は数え切れる人数にまで減少したそうだ。海はあるものの、良質な魚が獲れる訳でも無かったらしい。
もう、この村では生きられないな。
誰もがそう感じていた頃のこと。時代に似つかわしくない、美しい少女がどこからともなくやって来た。美しいその金色の髪は、その異質さは、人々にとって、既に只者とは思わせなかったらしい。
少女は哀れみに満ちた目で、荒野に堆積した溶岩に触れ、その瞳を閉じる。すると、小声で何やら不思議な言葉を念じ出した。
人々はその行動に怪しみを持っていたが、それと同時に、希望を感じていた。この少女は、きっと何かをしてくれる。この少女が、我々を助けてくれるのではと。
その希望は現実となって現れた。変化は早くもその翌日からだった。
なんと、少女が触れたその荒野が、ひ弱ながらも緑に覆われた、野原のようになっているではないか。
たったそれだけでも、人々は歓喜し、踊り狂った。ある人は興奮の余り若い女へ求婚し、またある夫婦はその場で盛んになり、後に幾つもの子を育て上げることに成功した―ちなみにその子孫は今も尚この街で生きている―。
緑だけでなく、人々に、子孫を繁栄させるほどの生命力と気力までも与えたのだった。
その後は見る見る内に自然が更に豊かになっていき、海では活きの良い魚が獲れるようになった。
少女の力だけで、村は噴火前当時以上の美しさになったってことね。
でも、ここまでのことをしたお手柄な彼女は、念じた後には既に確認されておらず、村を出ていく姿も確認されなかったらしい。
この一件は偶然にしても出来過ぎている。そう村人たちは考え、そして、少女の容姿やその力のこともあり、村の象徴、更には自然の神として崇め奉られることになった。
もしかしたら彼女こそが、その
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