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逆さの砂時計
Side Story
無限不調和なカンタータ 2
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る!
 「悪魔に被害を受けた人間の話はたまに聞いてたけど……そうか。人間が動植物を食べるのと同じで、悪魔にとっては人間が食料なんだね。じゃあ君も、最初に人間を食べた時はとても怖かったでしょう?」
 「……別に。私は小さい頃から命の使い方を熟知してるし、あんたと違って躊躇う理由は無いの」
 「命の使い方」
 「そ。他の命を喰らいながら、死にたいだの可哀想だのとほざく莫迦共とは、此処の出来が違うのよ。此処の出来が」
 右手の親指で私の心臓辺りを指し示せば、死んでも良いと絶賛現実逃避中のカールは、すっと目を逸らして落ち込んだ。
 「君には命を食べて……生きて、やりたい事があるんだね」
 「は?」
 また何を言ってるのかと呆れかけ
 「……カール。静かに立って数歩後退」
 「?」
 指示に従ったカールを見届けてから焚き火に砂を掛けて炎を消し、私もその場を数歩分離れた。
 光に慣れた視界を黒い闇が包み、炎の熱を帯びた肌に夜の冷気が牙を剥く。
 遠くに聴こえるのは獣の遠吠え。近くに反響するのは虫の聲と木の葉のざわめき。鳥の声もする。
 「……グリディナさん?」
 「黙って」
 神経を集中させ、空高く地中深く気配を探る。
 特に変化は無い、か?
 「……もう良いわ。戻って」
 「うん」
 乾燥した落葉を踏み付けて焚き火の位置まで戻るカールの足音。
 他に新しい物音が無いのを確認して、私も元に戻る。
 「なにか居たの?」
 傍にぼんやり浮かぶ二つのハチミツ玉が、不思議そうに瞬いて傾く。
 「……どうかしら」
 獣じゃない。何でもないと油断させて襲う型の悪魔でもなさそう。今この周辺に、害意を持った呼吸音は感じ取れない。
 一瞬、水溜まりに足を入れたら底無し沼だった……みたいな、凄い焦燥感があったんだけど。
 気の所為?
 「……ま、用心はしておくべきね」
 「ふぇあっ!?」
 「あんたね。いちいち奇声を上げないでよ。力が抜けるじゃない」
 「だ、だだだって、この体勢はちょっと……」
 「あんたは木登りできないでしょ。間怠っこしくて見てられないのよ」
 右手で肩を支え、左手で膝裏を持ち上げた。
 一部の人間にはお姫様抱っことか言われてる抱え方……女の私にやられるのは男として恥ずかしいとか、塵っぽい自尊心かしら? 暗闇の中でもはっきり判るほどあたふたしてる。
 「そ、そうじゃなくてですね! この体勢だと、私にその……む、む、」
 む?
 「む……胸が直に、当……っ」
 …………。
 「で?」
 「軽く流された!? ちょっとは気にしてよ! いえ、気にしてください! 貴女、自分が女性で私が男だと、理解してますか!?」
 何を言い出すかと思えば……。
 「あんた、女を相手にした経験無いわね?」
 「あ
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