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逆さの砂時計
Side Story
無限不調和なカンタータ 2
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ろひょろの根性無しが、どうし……あ。しまった。
 「あいつ、逃げるかな?」
 小さな動物を捌くのは可哀想とか、怖くてできないとか言いそうだ。
 「んー……」
 逃がすつもりは無いけど、ちょっと様子を見てみようか。
 戻って来るなら、宣言通り歪んだ自意識を実力に見合うまで徹底的に叩き直してやる。
 けど。
 此処で逃げ出す小物なら、自由意思なんか要らない。
 普段は音で操っといて、歌わせる時だけ解放すれば、こんな茶番に付き合う手間も省けるし。
 人間は短い年数しか保たない脆弱な玩具。有効に活用しなくちゃね。
 私があいつに惜しむのは歌だけ。漸く見付けた私の快音。
 さぁ、カール。あんたの答えはどっち?



 「ごちそぅさま、でした……ッ」
 辺りはすっかり真っ暗。
 パチパチと爆ぜる焚き火を挟んで向き合う男は……号泣しながら食事を終えた。
 「うっざ……」
 律儀に枯れ枝を抱えて戻って来たのは良いけど、その後のウザさは常軌を逸してた。
 涙が止まらないのはまだマシ。
 火を起こす時にも ごめんね を延々と繰り返し、本格的に解体作業を始めたら、頭の天辺から足の先まで汗だくになって硬直しやがった。
 最後まで目を逸らさずに吐き気も堪えた点は見直したけど……多分、見慣れた肉塊になったのだろう瞬間「うわああぁぁん!」などと、直ぐ隣で泣き喚かれてみなさいよ。本気で殴りたくなるから。
 「グリディナさんも、ありがとう、ござい……ました」
 顔を真っ赤に染め、荒れた目元を手首でゴシゴシ拭ってはいるが。涙が切れるまでには相当掛かりそう。
 何処まで情けないのよ、この男。
 「僕達人間は……こんな風に命を奪って生きてるんだ……」
 「そうよ。偉っそうな人間は、他者の命を踏みにじる悪魔は滅びるべしとか言ってるけどね。私達悪魔から見れば、自分の糧すら自分の手で獲れないヤツが、テーブルに足乗っけて何言ってんの? って感じ。他人任せに慣れた人間と、多くは単独主義の悪魔。どっちがマシに生きてんのかしらね」
 おっと。カールには皮肉になったかな。茫然と固まってしまった。
 でも、これは私の本音。
 私の目や耳には、悪魔よりも人間のほうがよほど醜悪に見えるし聴こえる。
 人間は、集団生活で身を護る手段を得た代わりに、生物としての生き方を忘れたんじゃないかしら?
 どいつもこいつも雑念まみれに迷走しまくってて、纏う音も全体的にザラザラと気持ち悪い。
 そしてその音は、これから未来、確実に劣化していくと見た。
 だからこそ、カールの歌は手離せないのよ。頭痛止めとして死ぬまで大いに利用させて貰うわ。
 でも! あれだけの実力をしょげた態度で濁されるのは、やっぱり我慢ならない。
 なんとしても、こいつの性根を真っ直ぐに直してや
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